歯磨き粉を利用した「食用」トランジスタが登場――スマート錠剤などの用途に期待

Credit: IIT-Istituto Italiano di Tecnologia

イタリア技術研究所(IIT)の研究チームは、2024年9月30日、歯磨き粉をベースにした「食べられる」トランジスタの開発を発表した。

この食用トランジスタは、2023年に同グループが発明した「食用電池」に続く成果だ。このデバイスは、体内から健康状態をモニターし、機能が終了した後は安全に溶解することから、将来の「スマート錠剤」の重要な構成要素になるとみられている。

この技術の鍵となる要素は、「歯磨き粉」だ。市販の歯磨き粉のなかには、歯のホワイトニング剤として働く青色の顔料、銅フタロシアニンの結晶を含む商品がある。この物質は歯に沈着して光学フィルターとして機能することで、歯の白さを引き立てる働きがある。歯に沈着した銅フタロシアニンは、唾液によって徐々に除去され、体内に摂取される。

IITのナノ科学技術センター(CNST)の研究チームは、セルビアのノビサド大学の歯科研究者と共同で、銅フタロシアニンの特性を調査した。実験室でのシミュレーションと臨床データを分析した結果、歯を磨くたびに平均して約1mgの銅フタロシアニンを摂取していることが明らかになった。研究チームは、この日常的に摂取する量の銅フタロシアニンを利用すれば、理論的には約1万個の食用トランジスタを製造できると説明している。

銅フタロシアニンの重要な特徴は化学構造にあり、その結晶内で電荷伝導を促進する。このため、有機エレクトロニクス用途の半導体として使用するための優れた材料の候補となる。

研究チームは、エチルセルロースで作った基板上に回路を印刷し、半導体としてこの新素材を組み込んだ。電気接点は、インクジェット技術と料理の装飾でよく使用される金粒子の溶液を使って印刷した。トランジスタのゲートは、ワタリガニなどの甲殻類に由来する、食品グレードのキトサンのゲル化剤をベースにした電解ゲルで製作した。このトランジスタは、1V未満の低電圧で動作する。

食用トランジスタを開発した研究チームは、食品とその誘導体の電子特性の探求に専念している。将来的には、医療や食品産業における品質管理への応用を目指した、食用電子デバイスの開発を目指している。

今回の研究成果は、『Advanced Science』誌に掲載された。

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An edible toothpaste-based transistor – Talk iit

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