本人の幹細胞から、その人の顔を再現した人工全顔皮膚モデルを作製 日本メナード化粧品

日本メナード化粧品は2024年11月7日、幹細胞の3次元培養技術を改良し、本人の「細胞」から本人の「顔」を再現した人工全顔皮膚モデルを作製したことを発表した。個人の顔形状と皮膚性状を反映した人工皮膚モデルを作製できる。

幹細胞は、再生能力に長けた組織である皮膚の再生を担っている。同社はこれまでに、安定的な人工皮膚モデルの作製やその応用性について研究してきたが、人工皮膚モデルは平坦なシート状のものが一般的で、実際のヒト皮膚の外観や質感、顔の形などの再現は難しかった。

今回、幹細胞の3次元培養に適した足場材料を選定し、侵襲性の低い抜去毛包の幹細胞を用いて、顔形状の人工皮膚モデルを作製した。細胞培養で「顔」のような複雑な立体構造を再現した人工皮膚を作製するには、細胞培養の足場として、高い「成型性」と培地の「含水性」などを兼ね備えた素材が必要となる。

今回の研究では、ゲル化時間がコントロールでき、作業性に優れるアルギン酸ハイドロゲルを選定した。アルギン酸ハイドロゲルを全顔を模した鋳型に注いでゲル化させることで、顔形状を再現した細胞培養の足場を作製した。

ルギン酸ハイドロゲルの培養足場の作製手順

人工全顔皮膚モデルは、真皮幹細胞を含有したコラーゲンゲル(人工真皮層)の表面に、表皮幹細胞を播種した組織を作製したものを、顔形状を再現したアルギン酸ハイドロゲルの培養足場に被覆させた後、皮膚組織を再生している。

人工全顔皮膚モデルの作製手順

皮膚組織を再生した人工全顔皮膚モデルは、皮膚組織で足場全体が覆われ、顔の皮膚を立体的に再現できていた。また、表皮と真皮が形成されて皮膚組織が構築できていた。

人工全顔皮膚モデルの組織切片

さらに、侵襲性の低い抜去毛包から採取した幹細胞を用いて、個人(毛包のドナー)の皮膚を再現した人工全顔皮膚モデルを作製した。この方法で作製した人工全顔皮膚モデルは、その人の細胞から顔の形の皮膚を再現しているため、個人の感受性に対応した皮膚の刺激因子(紫外線など)の評価や、有効性の評価、個人の顔の老化予測などができる。これにより、パーソナルな美容サービスや化粧品の開発、創薬や医療への応用が期待される。

ドナーの抜去毛から毛包幹細胞を分離培養

また、従来のような摘出皮膚からの細胞採取が不要となる。任意の形状を有する人工皮膚モデルを、侵襲性の低い抜去毛包から簡便に作製できるため、患部の形状に合わせた新しい皮膚の移植医療への応用も期待される。

関連情報

本人の“幹細胞”から本人の“顔”を再現した人工全顔皮膚モデルの作製に成功! | 日本メナード化粧品株式会社のプレスリリース

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