名古屋大学は2020年2月17日、北海道大学および産業技術総合研究所と共同で、導電性高分子(導電性プラスチック)における熱電変換性能の上限を決定するメカニズムを解明したと発表した。
名古屋大学によると、IoT機器への電源供給手段として、導電性高分子を使った熱電変換素子による発電の実用化が期待されているという。しかし従来、高分子材料の熱電発電性能が低く、なおかつ発電性能を決定する理論的なメカニズムがはっきりとは分からないという課題があった。
今回の研究では、分子配列の秩序が極めて高い高分子薄膜に、電解質を用いた連続的な電荷を導入することで、対象の高分子の電子状態を金属状態にまでコントロールすることに成功した。また、導電性高分子を用いた熱電変換素子の発電性能が、金属的な電子状態変化が起こる電荷注入量付近で最大値を持つことを解明。半導体と金属の電子状態の違いから、その理論的なメカニズムを説明できるという。
さらに金属状態への変化が、微小な結晶領域では従来考えられていたよりも低い電荷注入量で起こることも明らかにした。これは、結晶領域間を効率的に接続できる分子や素子の設計によって、より低い電荷注入濃度で現在よりも高い発電性能を実現できる可能性を示している。これにより将来、高い発電性能を持ったフレキシブルな熱電変換材料/素子の開発につながることが期待できるという。