太陽エネルギーと廃タイヤを使用した低コストの海水淡水化装置を発表

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カナダのダルハウジー大学の研究チームは、2024年10月31日、使用済みタイヤを利用して、太陽エネルギーを動力源として低コストで携帯可能な、海水を淡水化する装置を発表した。

この装置は海水淡水化に加えて小規模な熱電発電の機能を持ち、水質センサーの動力として利用する浮体式のソーラースチル(太陽熱蒸留装置)だ。特徴のひとつは、貴金属を使った類似の装置と比較して、はるかに廉価な部品を中心に構成されている点だ。

このソーラースチルのアイデアは、「耐熱プラズモニクス」から生まれている。耐熱プラズモニクスとは、過酷な条件下で光を特殊な方法で操作できる、熱的/化学的に安定したナノ材料の開発を目指す分野だ。

一般的なプラズモニック材料には金や銀のような貴金属が使用されるため、高性能だが高価になる。そのため、発展途上国でソーラースチルが普及するためには、地球上に豊富に存在する代替材料で、性能を損なわないように作る必要がある。

開発チームは、貴金属の代替として、プラズモニックチタンカーバイドに組み込むことができる熱分解炭を生成した。「熱分解」として知られるこのプロセスは、炭素廃棄物を酸素なしで高温加熱する。

試験で使用した炭素廃棄物は、コーヒーかす、ロブスターの殻、樺の木の残渣などさまざまだ。なかでもタイヤは生分解性がなく、廃タイヤから得られる炭素材料(pyrolytic char)を利用した。タイヤは埋立地で分解されるのに何百年もかかり、世界中に豊富にあることから、アップサイクルの好機になるという。

開発したソーラースチルでは、紙のように薄いこの材料の層を装置の発泡スチロールの表面に貼り付けることにより、冷たい海水から装置を隔離して、熱の局在化を最大化する。装置を水中に設置すると、ウィッキング(吸い上げ)システムによって海水が装置内に流れ、そこで太陽熱で加熱されたプラズモニック素材によって蒸発する。海水は、塩分を残して装置上部の透明なプラスチック製ドームで再凝縮し、密閉された袋に集められる。

テストでは、1日最大3.67Lという、受動的浮体式のソーラースチルとしては記録的な水量が得られた。開発チームは、コストは1Lあたり1セント以下で、脱塩、殺菌、除染を同時に実施することでコスト効率が高いと説明している。

開発チームの計画は、2025年の夏に南アジアでさらなるテストを行う予定で、最終的にはこの装置が世界中で利用できるようになることを期待している。

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