高い剛性と柔軟性を両立した磁性複合人工筋肉を開発――剛性は最大で2700倍変化可能 韓国UNIST

韓国の蔚山科学技術院(UNIST)は2024年10月25日、高い剛性と柔軟性を両立した磁性複合人工筋肉を開発したと発表した。

柔らかい人工筋肉は、人間の筋肉の滑らかな動きを模倣しており、ロボット工学、ウェアラブルデバイス、生物医学など、さまざまな分野で重要な技術となっている。その柔軟性からスムーズな動作が可能だが、従来の材料は概して剛性に限界があり、望ましくない振動があると重い物の持ち上げや正確な制御の維持が難しかった。

こうした課題を克服するため、研究チームは硬い状態と柔らかい状態の間を移行できる可変剛性材料を採用した。しかし、剛性を調節できる範囲には依然として制約があり、機械的性能も不十分だった。

そこで、新たなアプローチを採用し、強磁性粒子と形状記憶ポリマーを組み合わせて耐荷重と弾性の両方を大幅に向上させ、柔軟な磁性複合人工筋肉を作り出した。この新材料は、汎用性の高い剛性材料として認知されている形状記憶ポリマーと、強い磁力を発生させる強磁性粒子を結合してできている。

特殊な表面処理により、強磁性粒子は形状記憶ポリマーと複雑な絡み合いを形成する。この相乗的相互作用は複合材料の機械的特性を向上させるだけでなく、外部磁場に対する迅速で効率的な反応を促進する。その結果、遠隔レーザー加熱と磁場操作によって機械的特性と複雑な駆動運動を能動的に制御できる。

この人工筋肉は必要に応じて剛性を動的に調整でき、剛性を最大2700倍変化させる。高い剛性の条件下では、自重の1000倍までの引張応力と3690倍までの圧縮応力を支持できるように設計されている。さらに、可逆的な伸長、収縮、曲げ、ねじれを実証しており、伸縮性は800%を超える。作動効率の面でも、エネルギー効率が90.9%に達するという驚くべき性能を発揮した。

また、外部からの振動を軽減するハイドロゲル層を設計して組み込み、二重層構造を実装した。この構造により、急速な動作中であっても、柔らかい人工筋肉を正確に制御できる。この人工筋肉は、機械的振動を最小限に抑えながらプログラム可能なさまざまな反応を巧みに実行し、複雑なタスクをこなすことが可能だ。

この研究は、既存の人工筋肉の限界を超える機械的特性と性能を示しており、多様な分野での応用が期待できるという。また、レーザー加熱や磁場制御を含む複数の刺激方法を利用することで、伸長、収縮、曲げ、ねじりなどの基本的な動作を遠隔操作でき、物体を正確に操作するような複雑な動作もできる可能性があるとしている。

この成果は2024年9月10日付で『Nature Communications』に掲載された。

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