2時間で大気からアンモニアを作り出すポータブルデバイスを開発――肥料などの農業用途に利用可能 米スタンフォード大

米スタンフォード大学とキング・ファハド石油鉱物大学の研究チームは、風力エネルギーを利用して、空気をメッシュに通すことでアンモニアを精製できるプロトタイプ装置を開発した。温室効果ガス排出量の約3分の1を占める農業に変革をもたらす可能性がある。研究成果は、『Science Advances』誌に2024年12月13日付で公開されている。

肥料の主成分であるアンモニアは、空気中の窒素と水素を高温、高圧の環境で結合させて合成する。「ハーバー・ボッシュ法」として知られるこの手法は、100年以上前から使われており、世界のエネルギーの2%を消費し、年間二酸化炭素排出量の1%を占めている。

研究チームが開発した新しい手法は、周囲の空気を利用して水蒸気から窒素と水素を抽出し、アンモニアを合成する。研究チームは装置を開発するにあたり、さまざまな環境要因や水滴の性質がアンモニア生成におよぼす影響を研究した。また、アンモニアの生成に理想的な触媒の条件を特定し、水滴との相互作用を検討した。

これらの結果から最適化した装置を作製し、触媒をコーティングしたメッシュに空気を流して反応を促進させることで、温室での水耕栽培用肥料として十分な濃度のアンモニアを生成することに成功した。従来の合成法と異なり、室温、標準気圧の条件下で機能し、メッシュに外部電源を取り付ける必要もない。クリーンかつ安価にアンモニアを生成できる。また、農家が使用する場合、現場でポータブル装置としてアンモニアを合成できるため、メーカーから肥料を購入して輸送する必要がなくなる。

実験室での実験では、噴霧システムで水を再利用することで、わずか2時間で肥料に十分な濃度のアンモニアを合成することができ、さらなる可能性を示した。微多孔質の石素材でできているフィルターを組み込むことで、このアプローチはより幅広い農業用途に利用できるアンモニアを生成できる可能性がある。

研究チームは、この装置が市場に出るまでにあと2~3年はかかると考えている。それまでに、より大きなメッシュを使用してより多量のアンモニアを生成する技術を開発する予定だ。また、農業用途だけでなく、その高いエネルギー密度からクリーンエネルギーの担体としてもアンモニアは利用できる。水素ガスよりも効率的に再生可能エネルギーを貯蔵、輸送できるため、アンモニアは船舶や発電などの脱炭素化の鍵となることが期待されている。

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