- 2016-6-6
- 制御・IT系, 化学・素材系, 技術・スキル市場分析, 機械系, 転職・キャリアアップ, 電気・電子系
- 「新入社員の失敗」に関するアンケート調査, 新入社員
本コラムは、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント・河辺真典氏からの寄稿です。旬のキーワードを取り上げ、エンジニアのキャリア形成に役立つ情報を発信していきます。
fabcross for エンジニアでは、「新入社員の失敗」に関するアンケート調査を実施しました。
“新入社員の失敗”に焦点を当てたのは、2016年3月にTwitterで投稿された次のツイートが印象に残ったからです。
ウチの会社なんかでもそうですけど、よく「今は若い技術者が育たない」なんて言いますよね。でも、技術は往々にして仕事の中で身につけるものだし、技術を身につけるための仕事そのものが減ってきてるのに「技術者が育たない」もへったくれもあるかと思いません?
— 連理木 (@renribokushu) 2016年3月18日
詳しくは、こちらのまとめ記事を確認していただきたいのですが、難易度の高い加工しか依頼が来ない中で、比較的簡単な加工を「危なっかしい新人の3人」に任せたところ、「立て続けに同じ機械で同じミスをし、その機械はまだ新しいにも関わらず、修復不能なダメージを負った」というのです。
若手エンジニアに必要な経験をどう積ませるのか。設計・開発も製造も悩んでいる
新入社員にどうやって必要な経験を積ませればいいのか――。こうした課題に直面して悩んでいる教育担当者は、設計・開発の現場にも製造の現場にも多いはずです。
というのも、例えば製造現場なら、これまでは旋盤を使わせて実際に金属を加工する経験を積ませ、「こうやれば金属はうまく加工できるのか」という感覚を身に付けさせることができました。
それが今では、金属加工する感覚を身に付けていない新入社員がいきなりNC工作機械を扱うことになるわけです。「どうすれば金属を無理なく削れるのか」「どんな加工をすると工具に負担が掛かるのか」といった経験・感覚を持たない新入社員が操作するのですから、高価なドリルがバキッと折れてしまい、先輩社員がその尻ぬぐいに追われる姿を容易に想像できます。
設計・開発の現場でも同様の問題があります。少し前までなら2次元で図面をかいて、製造現場の熟練工に見てもらって「こんなもの、できるわけない!」と何度も叱られては図面をかき直す。そうした“通過儀礼”をほとんどのエンジニアが経験してきました。
ところが、今の新卒エンジニアは最初から3D CADで図面を作成します。確かに3Dの図面を見る限り、形状としては成立しているように思えるけれど、実際に加工して形にしてみたらまったく動かない。そんな事態が実際に起こってしまい、「現場力の向上」を課題として掲げる中堅エンジニアの姿を、私自身、何度も目にしてきました。
新卒エンジニアの失敗は、経験・感覚を身に付けさせられない「上司・先輩のサポート不足」が原因
恐らく、今の現場を引っ張る中堅エンジニアの皆さんは、「経験を積んで、感覚を身に付けてから、理論を学ぶ」という流れで技術を磨いてきたことでしょう。NC工作機械にしても3D CADにしても、経験・感覚を習得済みの中堅やベテランのエンジニアのために開発されたツールです。「便利なツールが出てきたな」と感じて、比較的スムーズに扱えるようになったはずです。
ところが、今の新卒エンジニアは、経験・感覚がない中で最初からNC工作機械や3D CADを与えられます。よりどころとなるものがないので、仕方なく必死に頭で理論を組み立てて「本当にこれで乗り越えられるのか」と悩みながらも先に進むしかありません。
突然、今の自分では扱いきれないツールを与えられて、高度な判断を求められることになる新卒エンジニアにとっては、「切り立つ崖だが何とか乗り越えろ」と言われているような気分になるのではないでしょうか。
今回の調査では「新卒エンジニアには『基礎学力』『専門的な知識』」を求めるエンジニアが多かったのにもうなずけます。経験・感覚を育てにくい今の環境では、理論・知識くらいしか頼るものがない。そう考えた中堅やベテランのエンジニアが多かったのかもしれません。
また、エンジニアほど「新入社員の失敗は『本人自身の性格や資質によるもの』もあるが、『上司・先輩のサポート不足』がより大きな原因」と考える傾向があることも今回の調査で分かりました。
新卒エンジニアの失敗は、経験・感覚を身に付けさせられない上司・先輩にも問題がある。アンケート回答中、協力してくれた回答者の何人かには、普段からよく目にしているこうした現場の問題が脳裏に浮かんでいたのではないでしょうか。
河辺 真典(メイテックネクスト 執行役員)
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