- 2023-9-1
- 制御・IT系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Science, フランス国立開発研究所(IRD), レトロスペクティブスタディ(後ろ向き研究), 全地球測位システム(GPS), 前兆, 地球物理学的前兆信号, 地震, 大地震, 学術, 断層すべり, 測定密度, 測定精度
全世界で起きた90件の大地震発生前の全地球測位システム(GPS)時系列データを分析したところ、大地震の2時間前に、断層すべりの前兆段階が存在することを示す証拠が得られた。この研究はフランス国立開発研究所(IRD)の研究者らによるもので、2023年7月20日付で『Science』に掲載された。
大地震を予測する能力は、長年にわたり未だ達成されていない目標だ。地震が発生する数分から数カ月前に警告を発するような地震短期予測は、観測可能な地球物理学的前兆信号に依存している。いくつかの大地震に関するこれまでのレトロスペクティブスタディ(後ろ向き研究)から、本震の前にゆっくりとした非地震性すべりの前兆段階が、断層で観測可能であることが示唆されている。
しかし、いくつかの大地震前に観測され、前兆すべりの可能性があると提案されている現象は、必ずしも地震に直接先行して起こるわけではなく、ほとんどの地震発生前には観測されておらず、また、観測後に地震が発生しないことも頻繁にあるため、このような観測と大地震との関連性については不明なところが多い。その結果、大地震を予測できるような明確な前兆信号が存在するかどうかは不確かなままだった。
今回の研究では、大地震前の短期的な前兆断層すべりを世界規模で系統的に調査した。研究者らは、世界中の測地点3026カ所から得られた高レートGPS時系列データを用いて、モーメントマグニチュード7以上の地震90件が発生する前の断層変位を測定した。このデータを統計的に分析したところ、地震破壊の約2時間前に、震源付近で断層すべりの指数関数的な加速が始まることを示すかすかな信号が発生していることが分かった。
研究者らによると、この発見は多くの大地震が前兆すべりから始まることを示唆しているという。ただし、この研究詳細に対して、このようなゆっくりとしたすべりの加速が大地震と明確な関連性があるのかどうか、また、有用な警告を発するために必要な精度で個々の地震を測定できるかどうかは明らかでないとの指摘もある。
現在の計測技術では個々の地震の前兆すべりを検出することはできないが、この研究結果は、大地震予測のためにより精度の高い計測機器開発と断層周辺の計測密度向上を促すものであり、測定精度と測定密度を改善させることができれば、効果的に前兆段階を検知し、監視できる可能性があるという。