- 2024-2-13
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東京理科大学の研究チームが、結晶でもなくアモルファスでもない第三の固体物質と言われる準結晶や近似結晶の、磁気特性と磁気構造、更に磁気相図を解明することに成功した。準結晶タイプの3種類の1つであるTsai型の金・ガリウム・テルビウム(Au-Ga-Tb) 1/1近似結晶において、電子と原子の比率e/a比に応じて強磁性と反強磁性が現れることを明らかにした。準結晶/近似結晶における磁気秩序の解明に繋がる成果であり、将来的に磁気冷凍やスピントロニクスを始めとする応用研究に発展すると期待される。研究成果が、2023年12月19日に『Materials Today Physics』誌にオンライン公開されている。
準結晶は、結晶を定義づける並進対称性は持たないが、原子配列に高い秩序性を有しており、結晶でも非晶質アモルファスでもない固体として、その後ノーベル化学賞に輝いたイスラエルのDaniel Shechtman博士により1984年に発見された。アルミニウム(Al)とマンガン(Mn)からなる合金を急速に冷却した物質に、二次元結晶においては埋め尽くすことのできない正五角形が規則的に並んだ無数の構造からなって、5回転対称性を示すとともに正20面体の対称性も有し、規則的に並んではいるものの結晶に存在するはずの並び方の周期性が見当たらないことが判明した。その後、Al-Cu-FeやAl-Ni-Coといった熱的に安定な準結晶も発見され、現在までに「Mackay型」、「Bergman型」、「Tsai型」と呼ばれている3種類の特徴的な局所構造を持つ準結晶が見出されている。
さらに準結晶構造をつくる合金の組成をわずかに変えると、準結晶によく似た局所構造を持ちながら、結晶のような周期性を併せ持つ近似結晶を作ることができ、その構造的特徴やさまざまな物理化学特性も明らかになってきている。だが、これら準結晶や近似結晶の磁気的特性については、その複雑性から未だ完全解明には至っていない。
研究チームは、一軸異方性の大きな磁性元素としてテルビウム(Tb)を導入したAu68-xGa18+xTb14(x=0~27)の組成を持つ近似結晶を20種類作成し、磁気特性を系統的に調べた。これらの近似結晶ではTbが正20面体に近い形のクラスターを形成するが、その安定な磁気構造は電子数と原子数の比率e/a比によって変化し、e/a<1.72ではクラスター上の磁気モーメントが[111]軸周りで渦を巻くような反強磁性秩序の配置を、またe/a>1.72では [111]軸周りで渦を巻くような強磁性秩序の配置を示すことが判った。更に、クラスター上の磁気モーメントの相対的な向きを調べたところ、反強磁性では最近接サイト間の磁気モーメントの向きが反平行(相対角>90°)に近く、強磁性では平行(相対角<90°)に近くなっていることも明らかになった。
研究チームは、「この研究によって、準結晶や近似結晶の磁気秩序が解明され、将来的に磁気冷凍やスピントロニクスを始めとする応用研究に貢献できる」と期待している。