雪かき不要――自己発熱して雪を溶かすコンクリートを開発

アメリカのドレクセル大学の研究チームが、コンクリートに相変化材料「PCM(phase change material)」を導入することによって、温度が氷点下に近づくとコンクリート自体を自発的に暖めて、表面上の雪や氷を溶かすことのできるコンクリートスラブを製作することに成功した。PCMとして凝固温度約5.6℃の液体パラフィンをコンクリートに混合し、液体から固体になる際に発生する凝固熱を利用する。大学キャンパスに設置した実環境試験によって、気温が氷点下になってもコンクリートの表面温度を5.5~12.8℃に最大10時間維持できることを確認した。冬季に寒冷な気候に曝され、除雪や融雪塩散布が欠かせない北西部の歩道やハイウェーに活用できると期待している。研究成果が、2024年3月18日にアメリカ土木学会の『Journal of Materials in Civil Engineering』誌に公開されている。

氷点下まで気温が下がる厳しい寒冷期間では、積雪の凍結と融解のサイクルが繰り返し発生し、コンクリート表面で膨張と収縮が繰り返され、時間とともに割れや剥離の損傷を起こして構造全体の信頼性を損なっている。幹線道路交通安全局の推定によると、アメリカ北西部では雪や氷の除去作業で毎年23億ドル(約3487億5500万円)が使われ、道路損傷の修理に多額の費用が費やされている。研究チームは、「コンクリートの耐用年数を拡大する方法の1つは、冬季において表面温度を氷点以上に保つことで、凍結と融解のサイクルをできるだけ避けてコンクリート損傷を防ぐとともに、除雪車走行や融雪塩散布の必要性を削減できる」と考え、周囲の気温が低下したときに、コンクリート表面温度を高く維持する手法の探索にチャレンジした。

研究チームは、PCMとして凝固温度が約5.5℃の液体パラフィンの凝固熱を活用することに着眼した。気温が凝固温度以下になると、液体パラフィンは固体に相変化し始め、それに伴い170~180J/gの凝固熱を自発的に発生する。PCMをコンクリートに混合する方法として、多孔質の軽量骨材に吸収させてコンクリートに混合する方法と、マイクロカプセルに装入してコンクリートに混合する方法の2つを考案した。各々約76cm四方のスラブを作製し、2021年12月から室外の実環境試験装置に装着した。

実験期間の2年間で積雪の凍結融解サイクルが32回あり、25mm以上の積雪も5回あった。熱センサーとカメラを用いてスラブ温度および雪と氷の融解挙動をモニターした結果、軽量骨材を利用したコンクリートは、気温が氷点下に下がっても5.5~12.5℃の表面温度を最大10時間維持するとともに、1時間あたり6mmの速さで約50mmの積雪を溶かすことを確認した。

マイクロカプセルを利用したコンクリートは発熱速度が大きいものの、高温維持できる時間は約半分であった。軽量骨材を利用したコンクリートではPCMが均質分散し、広い温度範囲で緩やかに熱放出するので、凍結対策にはより適切だと研究チームは考えている。凍結融解サイクルの間隔が短いと、PCMが液体状態に戻る「再充電」時間がなく、期待される機能を発揮できない問題があることから、発熱時間を長くして融解機能を向上する研究を継続する予定だという。

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