物質・材料研究機構(NIMS)は2024年2月5日、20%以上の光電変換効率を保ちながら、60℃の高温雰囲気で1000時間以上の連続発電ができる、ペロブスカイト太陽電池(1cm角)を開発したと発表した。
ペロブスカイト太陽電池は、低温プロセスで作製でき、20%以上の光電変換効率を得られることから次世代型の太陽電池として研究が進められている。しかし、そのイオン性結晶半導体としての特異な性質により、水分により劣化しやすいという課題があった。また、ペロブスカイト太陽電池内のペロブスカイト層と電子輸送層との界面に欠陥が生じると電力が取り出せなくなるため、発電効率向上には欠陥を除去するなどの界面の制御が必要になる。
ペロブスカイトAサイトに有機アミン類を導入することで、半導体層と絶縁層が交互に積層した2次元(2D)ペロブスカイトを作製できる。2Dペロブスカイトは3次元(3D)ペロブスカイトと比較して水や酸素に強いことが知られている。今回の研究では、「FA0.84Cs0.12Rb0.04PbI3 3Dペロブスカイト/C60」界面に有機アミンを導入。これにより2Dペロブスカイト結晶粒を形成し、ペロブスカイト/C60界面の欠陥を除去することで、発電効率を低下させずにかつ耐久性も向上させた。
これまでペロブスカイト太陽電池では、50℃以上で1000時間の発電はできなかった。今回開発したペロブスカイト太陽電池では、光電変換効率20%以上を維持しつつ、60℃の高温雰囲気下で1000時間以上の連続発電を実現した。
NIMSでは今後、ペロブスカイト太陽電池の高効率化や高耐久化のための試験を実施すると共に、長期信頼性を保証するための加速試験の方法を確立することを目指す。