- 2024-3-7
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- AI, GPU(画像処理半導体), コンピュータチップ, シリコンウェハー, シリコンフォトニック(SiPh)チップ, ベクトル行列乗算, ペンシルベニア大学, 光波, 数学的計算, 数学計算, 電気
ペンシルベニア大学は2024年2月16日、電気の代わりに光波を利用して、AIの学習に必要な数学計算を行う新しいコンピューターチップ「シリコンフォトニック(SiPh)チップ」を開発したと発表した。コンピューターの処理速度の向上と同時に、エネルギー消費量の削減が見込まれる。
今回の研究では、ベクトル行列乗算を実行できるチップの設計を目指した。この数学的演算は、現在のAIツールの原動力となっているニューラルネットワークの開発と機能の中核をなす。
開発されたSiPhチップは、光波と物質との相互作用を利用するものだ。チップの設計では、ナノスケールで材料を操作し、最速の通信手段である光を使って数学的計算を行うという先駆的な研究と、大量生産のチップに使用される安くて豊富な元素であるシリコンを用いるSiPhプラットフォームとを、初めて組み合わせた。
このチップの特徴は、均質な厚さのシリコンウェハーを使うのではなく、特定の領域でだけシリコンを150nmほどに薄くするなどして利用することだ。これにより、チップを通る光の伝播を制御できる。厚さの変化は特定のパターンで光を散乱させるように分散させることができ、それによりチップが光速で数学的計算を実行できるようになる。
さらにこのチップには、より高速の計算とエネルギー消費の低減に加えて、プライバシー上の利点もある。多くの計算を同時にできるため、コンピューターのワーキングメモリに機密情報を保存する必要がなくなり、ほぼハッキング不可能となるのだ。
この設計はすでに商用利用可能で、新たなAIシステムの開発に対する関心の広まりとともに、需要が急増しているGPU(画像処理半導体)にも適用される可能性があるという。このチップを利用することで、AIシステムの開発における学習と分類の速度を向上できると考えられる。
この研究成果は同日、学術誌『Nature Photonics』に掲載された。
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New Chip Opens Door to AI Computing at Light Speed – Penn Engineering Blog