中国科学院、熱音響冷凍技術の効率を従来の2.7倍に改善――エネルギー消費効率1.12を達成

CREDIT: TIPC

中国科学院理化技術研究所(Technical Institute of Physics and Chemistry)の研究チームは、熱駆動型熱音響冷凍機(HDTR)について、冷却効率を従来の2.7倍に改善する新たなデバイス構成を開発した。

熱音響冷凍は、熱エネルギーと音波が相互に変換できることを利用して、音波を流すことで装置内を冷却する技術。HDTRには「可動部品がない」「ヘリウムや窒素など環境に優しい物質を使用する」「信頼性が高い」といった利点がある。しかし効率が低いことが、商業利用の妨げとなっている。

HDTRの効率は、「エネルギー消費効率(COP)=冷却能力(kw)÷加熱消費電力(kw)」により算出できる。しかし、既存の直結型構成のHDTRでは、加熱温度の上昇に伴いCOPが低下するという課題があった。

これを乗り越えようと同研究チームは、バイパスを追加した構成を考案した。音響パワーの一部を迂回することが可能となり、高温環境下においても音響パワーを生み出すエンジンユニットと、それを消費する冷却機ユニットとの間で音響パワーのマッチングを効率化することに成功した。

次に同研究チームは、キロワットスケールのHDTRのプロトタイプ機を製作した。ヘリウムを冷媒に使用し、加熱温度450℃、周囲温度35℃、冷却温度7℃の条件下で、実験の最高値となるCOP1.12、冷却能力2.53kWを達成した。既存のHDTRによるCOP最高値の2.7倍に相当する。なお、家庭用エアコンのCOPは4~5前後となっている。

研究者らによれば、室内の熱駆動型冷凍の分野において、新たなHDTR技術の性能は、吸着式冷凍機や単効用吸収式冷凍機を上回り、二重効用吸収式冷凍機に匹敵するものだという。今回の結果から、空調市場においてHDTR技術の商業利用が進むのではないかと期待している。

ヘリウムに比べて、より豊富で経済的で環境にも優しい冷媒として、窒素がある。そこで研究者チームは、窒素を使ったシステムの性能もテストした。COPは、同研究所が以前に報告した値より良好だった。この研究は、『Applied Physics Letters』2024年1月8日号に掲載された。

研究者らは、新しいHDTRシステムでは、高温の熱エネルギーを効率的に利用でき、吸収式冷凍機より高いCOPが得られると主張する。数値解析により、「加熱温度800℃以上でCOPの値が2になる」という可能性が示されているという。

研究チームは、システムの冷却性能をさらに向上させるため、現在のシステムにいくつかの変更を加えて、加熱温度を上昇させる試みを開始している。近い将来、二重効用吸収式冷凍機を上回るCOPを達成できると見込んでいる。

この研究の詳細は、『Cell Reports Physical Science』2024年2月1日号に掲載された。

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