出光興産は2024年3月15日、山口県の徳山事業所の商業用ナフサ分解炉などで、既存の燃料の2割超をアンモニアに切り替えて操業する実証試験を行い、アンモニア燃焼が可能なことを確認したと発表した。商業用ナフサ分解炉での燃料アンモニアの燃焼は国内初で、世界でも先進的な試みだとしている。
ナフサ分解炉は、ナフサを高温で分解し、石油化学製品の基礎原料となるエチレンやプロピレンなどを製造する設備。同社は2023年4月に「石油供給構造高度化事業費補助金」の採択を受け、徳山事業所でアンモニアの貯蔵タンクや配管などの中間供給設備のほか、アンモニア燃焼設備の設置工事を進めてきた。設備は2024年2月に完成し、同月6日から8日にかけて実証操業を行った。
今回の実証操業は、燃焼排気ガス中の窒素酸化物を低減させる脱硝設備を装備していないナフサ分解炉で実施。化石燃料と遜色ない燃焼性があり、操業への影響もないことを確認した。アンモニア専用バーナーの使用や燃焼制御などによって、窒素酸化物も環境規制値以下に収まった。
燃焼時にCO2を排出しないアンモニアは、エネルギーキャリアや発電、工業ボイラー用の新燃料として注目されているが、化石燃料と比較して発熱量が低く、着火性も悪いことから燃焼性に劣るといわれてきた。また、燃焼時に発生する窒素酸化物の抑制も課題となっている。
工場などの操業中の大規模化学プラントなどでのアンモニア燃焼は、操業へのリスクがあり、設備整備に大きな投資が必要になることなどから、これまで行われてこなかった。
同社では、今後も徳山事業所でアンモニア燃料の実用化に向けたデータやノウハウを蓄積し、化学分野など工業用加熱炉向けのアンモニア燃料への転換ソリューションの提供を目指す。
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国内初、商業用ナフサ分解炉の燃料としてアンモニア燃焼を実施 -2割超の燃料転換達成、化学産業のCO2排出量削減へ- | ニュースリリース | 出光興産