京都大学、安価な樹脂を用いて抗体を高速分離できる多孔性樹脂を開発

京都大学の久保拓也准教授らやケムコによる研究グループは2017年3月15日、安価な樹脂を利用した多孔性材料(スポンジモノリス)を開発し、抗体の高速分離に成功したと発表した。バイオ医薬品精製の高速化、簡便化や低コスト化に寄与するるという。

近年急速に開発が進められているバイオ医薬品など抗体の精製過程では、煩雑な工程をともなう前処理・分離・精製に長時間を要する。その一方で、臨床検査段階でも年間100kg以上のターゲット抗体が必要であり、市販化される医薬品ではさらに大量の単離・精製が必要になる。このため、大量かつ高速な精製技術が求められている。

また、新薬開発段階においては、候補の抗体のスクリーニングのために多検体の分析が必要だ。この精製、分析では、タンパク質間の特異的な相互作用を利用したアフィニティクロマトグラフィーという手法が用いられている。現在はProtein Aを固定化したシリカゲルやアガロースの粒状充填剤を分離剤として用いる場合が多いが、現状よりも高い通水性や低コスト化は困難であるという。このため、分離・精製過程の簡便化、高速化、低コスト化が進んでいないことが、現在の抗体医薬品の低コスト化に対するボトルネックになっているという。

今回同研究グループでは、汎用の比較的安価な合成樹脂を使い、超高通水性のスポンジモノリスを利用した新しいアフィニティクロマトグラフィー用カラムを着想。エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体(PEGM)基材のスポンジモノリスを液体クロマトグラフィー用のカラムに充填してProtein A固定化スポンジモノリス(ProA-SpM)を作製した。また同様にして、タンパク質間反応の足場としての可能性を明らかにするため、消化酵素であるPepsinを固定化したスポンジモノリス型カラムも作製した。

標的タンパク質である免疫グロブリンG(IgG)を用いたProA-SpMの評価では、グラジエント溶出条件において、中性から酸性に移動相を変化させることでIgGのピークが得られた。また高流速下における評価では、ProA-SpMは流速9.0mL/minにおいても良好な回収率が得られた。さらにPepsinを固定化したカラムでは、100mL/hの比較的高流速条件下でも、良好な抗体の消化が確認された。

この新しいスポンジ材料の利用により、カラム作製の操作を簡便化できるとともに、連続的につながった大きな貫通孔(10nm以上)により、低い負荷圧を保ったまま通常の10倍以上の通水速度を実現できる。抗体医薬品の分離・精製プロセスの簡便化、高速化、低コスト化とともに、タンパク質間反応の足場としての可能性から、バイオ医薬品開発の迅速化や新規抗体の構造解析にも有用だという。

関連リンク

プレスリリース

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る