- 2024-3-26
- 技術ニュース, 海外ニュース, 電気・電子系
- Nature, カリフォルニア大学サンディエゴ校, リチウムイオン電池, リチウム金属, 二次電池, 固体リチウム硫黄電池, 固体電解質, 学術, 正極, 正極材料, 硫黄, 負極, 電気自動車
カリフォルニア大学サンディエゴ校が率いる研究チームは、高い電気伝導度と自己修復能力を持つ正極材料を開発し、従来の課題を克服した実用性の高い固体リチウム硫黄電池を提案した。
同研究成果は2024年3月6日、「Nature」誌に掲載された。
固体リチウム硫黄電池は、固体電解質とリチウム金属でできた負極、硫黄でできた正極からなる二次電池だ。同重量のリチウムイオン電池に比べ、最大2倍のエネルギーを蓄電可能で、電気自動車の航続距離を2倍にできる可能性を持つ。さらに、豊富で容易に入手できる材料を使用するため、コストを下げ、環境にも優しい選択肢として期待されている。
しかし、硫黄正極は電気伝導度が低く、充放電中に大きく膨張/収縮するため、構造的な損傷や固体電解質との接触低下を引き起こす。結果的に正極の電荷移動能力を低下させ、固体電池の全体的な性能と寿命を損なう。
こうした課題を克服するため、研究チームは硫黄とヨウ素からなる正極材料を開発した。また、硫黄の結晶構造にヨウ素分子を挿入することで、正極材料の電気伝導度が硫黄結晶単体より11桁も向上することを発見した。
さらに、同結晶材料は65℃という低い融点を持つことが分かった。つまり、正極は充電後の少しの熱で容易に再溶融して、充放電過程による損傷界面を修復できる。自己修復能力は、充放電を繰り返す間に正極と電解質の界面で発生する累積損傷に対処するための重要な機能となる。
同正極材料の有効性を検証するため、研究チームは試験電池を作り、充放電のサイクルを繰り返した。その結果、電池は400サイクル以上にわたって安定し、87%の容量を維持した。
電池の自己修復能力は、サイクル寿命を大幅に延ばし、リチウム硫黄固体電池の実用化に向けた道筋を作る可能性があるという。
研究チームは、固体リチウム硫黄電池のセル設計を改善してセル形式を拡大することで、同電池技術のさらなる発展に取り組んでいる。
関連情報
Healable cathode could unlock potential of solid-state lithium-sulfur batteries(EurekAlert!)