推定埋蔵量100万トン――ヨーロッパ最大のレアアース鉱床を発見

スウェーデンの大手鉱山会社LKABが、鉄鉱石の産出で有名な同国最北部のキルナ地域で、永久磁石として最も強力なネオジム磁石に欠かせないレアアース(REE)の巨大鉱床を発見した。ネオジム磁石はEVや発電モーター、携帯機器などに広く使われているが、ネオジムを含むREEは中国が世界の60%以上を産出しており、ヨーロッパの先端産業にとって大きな地政学的リスク要因になっている。LKABは2023年1月12日、発見されたPer Geijer鉱床には100万トンを超えるREEが埋蔵され、ヨーロッパ最大のレアアース資源となると発表した。

EVや風力発電で使われる強力なモーターからハードディスクや携帯機器に至るまで、永久磁石は最先端技術にとって必要不可欠である。最も強力なのは (NdDy)-Fe-B系のネオジム磁石であり、1982年に住友特殊金属(当時)の佐川眞人博士により発明された。直ちに工業化され、当時の高性能磁石であったサマリウムコバルト磁石に取って代わり、大型用途から小型デバイス用途まで幅広く採用されている。2035年に販売される乗用車の100%をゼロエミッション車(ZEV)化することに合意したEUにおいては、ネオジム磁石用のREEの需要が5倍以上に増加すると予想されているが、現状REEの90%以上を中国からの輸入に依存しており、供給に対する大きなリスク要因になっている。

LKABは、キルナ地域において130年以上に渡り鉱山開発を進め、現在ではヨーロッパの鉄鉱石の80%を生産するとともに、世界の主導的鉱山会社の立場から水素技術を用いてスポンジ鉄を製造する脱炭素戦略を推進するなど、鉄鋼産業の改革を追求している。また、1980年代から他の産業用鉱物分野も活発化して、現在では30種類以上の鉱物製品を生産している。

キルナ近郊で発見されたPer Geijer鉱床における資源探査の結果、5億トン以上に及ぶ鉄分の高い鉱物資源と、副産物として100万トン以上のレアアース酸化物の埋蔵が確認され、ネオジム磁石を製造するのに必要なEUの将来的な需要に対して充分な量となることを報告している。また、食糧生産に欠かせないミネラル肥料に添加できる高品質のリンが、副産物として産出できることも確認され、リン使用量の90%をロシアなどからの輸入に頼っている現状を軽減できると報告している。

ただし、実際に資源を採掘することが可能になるまでには、長い道程がかかることも認めている。採掘条件を明確にした探査許可申請、採掘に関する採算性と持続性の評価、および地域の環境に与える環境アセスメントの申請を行う必要があり、実際に採掘を開始して原料を市場に供給するまでには少なくとも10〜15年を要するとみられている。

関連情報

Europe’s largest deposit of rare earth metals is located in the Kiruna area – LKAB

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