- 2024-5-6
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- International Journal of Extreme Manufacturing, 切削方法, 学術, 微細リブ, 微細構造, 楕円振動チゼリング(EVチゼリング), 清華大学, 表面プラズモンデバイス, 超高アスペクト比, 金属, 高性能伝熱促進
中国・清華大学の研究チームが、金属を超高アスペクト比(高さ/幅)の微細構造に加工できる、楕円振動チゼリング(EVチゼリング)という切削方法を開発した。加工時の切りくずは微細構造へと直接変換するため、これまで廃棄物とされてきた切りくずに価値を付与できるという。
同研究成果は2024年1月22日、『International Journal of Extreme Manufacturing』に掲載された。
高アスペクト比の微細構造を持つ金属表面は、高性能伝熱促進や表面プラズモンデバイスなどへの応用が期待できる。しかし、金属表面に高アスペクト比の構造を、既存技術で高速かつ低コストで作製することは困難だった。そこで研究チームは、高効率で超高アスペクト比に加工できるEVチゼリングを開発した。
切削加工は、金属材料で最もよく使われる加工方法である。EVチゼリングは従来の切削加工と異なり、後方に移動する工具にマイクロスケールの楕円振動を重ね合わせ、振動サイクルごとに高アスペクト比の切りくずを生成する。工具が後方に移動するため、切りくずは材料表面に残されて微細構造を形成する。1回の振動サイクルで1つの微細構造を生成するため、1kHz以上の高速に振動する工具を用いれば、切削加工を効率化できる。
研究チームは、EVチゼリングの有効性を検証するため、銅表面のテクスチャリング試験を実施したところ、1~10μm間隔で2~12のアスペクト比を持つ、均一な微細リブの加工に成功した。前方に移動する工具を使用した従来の楕円振動切削に比べると、EVチゼリングで加工した微細構造は、アスペクト比を最大40倍まで向上した。
切削加工中の切りくずは目視で確認できないが、走査電子顕微鏡により、微細構造中に切りくずが観察された。加工時のパラメーターを変えると、切りくずを介して微細構造がさまざまな種類に変化した。切削加工は切りくずを出さずに、微細構造に変えてしまったのだという。
研究チームは現在、微細構造がどのように生成されるのかを探るため、加工表面や切りくずの変形メカニズムを調べると同時に、加工した微細構造の伝熱促進や凍結防止、抗菌などへの応用に取り組んでいる。