「超臨界水」で廃プラスチックをクリーンエネルギーに変える――マイクロプラスチック汚染解決への取り組み

ペレット状にリサイクルされた廃プラスチックを、オイルに変える化学変換プロセスが開発された。更に、蒸留によって、このオイルからガソリンやディーゼルに近い燃料を分離することができる。

パデュー大学の研究チームが、廃プラスチックをクリーンな燃料や有用物質に変換する化学変換プロセスを考案した。有機系化学物質を強力に溶解し分解することのできる、超臨界水を利用するもので、深刻な環境問題になりつつあるマイクロプラスチックによる海洋汚染に対する、1つの有力な解決策として期待されている。研究成果の一部は、2019年1月29日の『ACS Sustainable Chemistry and Engineering』誌に公開されている。

過去65年間に製造されたプラスチックはおよそ83億トン。実にその79%が埋め立てや海洋に投棄されており、毎年800万トンのプラスチックが海洋に流れ出しているという国連の推計もある。世界経済フォーラムは、このままでは2050年までに海洋は魚よりも廃プラスチックの方が多くなるだろうと警告している。

同大化学工学科Linda Wang教授は、「私たち戦略は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの廃プラスチックを、ナフサやクリーン燃料などの有用製品に効率的に変換し、リサイクル推進の原動力を創出することにあります」と語る。「開発技術は、リサイクル産業の収益を押し上げるとともに、廃プラスチックの蓄積を減らすことができるでしょう」

研究チームが注目したのは、強力な酸化力を持ち、常温常圧で安定な有機物や化学物質を分解できる「超臨界水」だ。水などの流体の温度と圧力を臨界点以上に高め、液体と気体の区別がつかなくなる超臨界状態にすることで、液体の溶解性と気体の拡散性を併せ持たせたものだ。また、強い溶解力があるので、溶解度差を利用して選択的な物質の抽出が可能になる。既に二酸化炭素を使った超臨界では、コーヒーの脱カフェインや天然原料からの医薬成分の抽出が実用化されている。

研究チームは、380℃以上で220気圧以上の超臨界水を使い、数時間の反応でペレット状のポリプロピレンをオイル(ナフサ)に変換することに成功した。更に、蒸留プロセスによって、このオイルからガソリンやディーゼルに近い燃料を分離することができた。また、温度を更に高めることにより、反応時間を短縮できることも確認した。

ポリプロピレンなどのポリオレフィン系廃棄物の90%を、ナフサを介して高純度のポリマー、燃料、モノマーなど多くの有用製品に変換できる、とWang教授は語る。また、ポリオレフィン系廃棄物からクリーンな燃料が生成されれば、ガソリンやディーゼル燃料の年間需要の4%を充足することができる。研究チームは、既に特許出願しているが、この技術を商業スケールで実証するのに協力してくれる投資先や提携先を探している。



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