未来の航空機の静音飛行へ向けて――燃料節約が見込まれるBLIダクテッドファンの騒音発生原因を解明

Image Credit:Dr Feroz Ahmed

燃料消費を抑えられる境界層吸い込み(BLI)ダクテッドファンから生じる騒音の発生原理が明らかになった。この研究は英ブリストル大学によるもので、2024年4月15日付で『Journal of Fluid Mechanics』に掲載された。

研究対象となったBLIダクテッドファンは、現代の航空機が搭載する大型エンジンに似ているが、翼の下ではなく航空機の機体に一部が埋め込まれている。機体前面と表面の両方から空気を取り込むため、飛行機を動かすためにそれほど強力なパワーを必要とせず、燃料の消費を抑えられる。しかし、稼働時に発生する騒音が認証取得の主な障害となっている。

BLI構成についてのこれまでの研究のほとんどは、平らな機体表面に境界層が形成される、ダクトなしのファンを対象としていた。そこで、今回の研究では、湾曲した機体表面に設置された埋め込みダクテッドファンから発生する騒音に寄与するさまざまな要因を綿密に調べた。

研究チームは、ブリストル大学の航空音響風洞施設を利用し、BLIダクテッドファンの騒音は、ダクト、回転ファン、湾曲した機体表面を流れる空気(流入境界層)の3つの間で起こる複雑な相互作用から生じることを空力音響測定により特定した。

そして、騒音パターンはファンが生み出す推力の量によって変化することが分かった。ファンが高推力を出しているときは、ダクトがないファンと同様の騒音パターンが観察されたが、ファンの推力が低くなるとダクト自体が出す騒音が大きくなり始めるため、騒音パターンが変化する。

研究チームは、湾曲した壁に隣接して電動ダクテッドファンを取り付けたBLIテスト装置を設計し、仏ONERAの多用途航空機「NOVA」の設計コンセプトに見られる埋め込みエンジンの構成を再現した。この装置から、ファンの推力出力や発生する騒音の大きさなど、さまざまな種類のデータを収集。いくつかの騒音源の間における複雑な騒音相互作用メカニズムを詳細に分析することで、騒音がどこで発生し、さまざまな推力レベルでファンが作動した際に騒音がどのように変化するかという、騒音の原因となっている物理現象を明らかにした。

研究チームによると、BLIダクテッドファンの騒音メカニズムを把握することで、大型の従来型航空機から小型の電動垂直離着陸機(eVTOL)に至るまで、未来の航空機コンセプトにおける、より静かな機体一体型推進システム向けの産業ガイドライン策定の可能性が期待されるという。

さらに、BLIダクテッドファンにおける騒音の原因を解明するために研究チームが実施した総合的な調査は、流体力学コミュニティーにおいて重要な研究活動の方向性を誘導する可能性があるとし、広範囲の乱流にさらされるダクテッドファンの空力音響現象に関する理解がより深まり、さらなる探求が可能になると期待される。

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