野菜の切断をモデル化する――農産物加工用ロボットのための切断シミュレータを開発

PHOTO/ERIC HEIDEN/NVIDIA.

南カリフォルニア大学とNVIDIAの研究チームは、果物や野菜といった食べ物をカットするときにナイフにかかる力を高精度で再現できるシミュレータ「DiSECt(A Differentiable Simulation Engine for Autonomous Robotic Cutting)」を開発した。食品加工や外科手術用のロボットへの応用が期待できるもので、研究結果は、2021年7月16日にオンライン開催された「Robotics: Science and Systems(RSS)Conference」で発表され、最優秀学生論文賞を受賞した。

工業製品の切断工程にロボットを導入するのは珍しくない。しかし、トマトやキュウリといった農産物に、同じ形をしたものは1つもなく、こうした違いに対応できるロボットシステムの構築は、困難を極めていた。

これに対処するため、研究チームは有限要素法(FEM)を拡張させたシミュレータ「DiSECt」を開発した。そこでは切断される物体がメッシュで表され、切断面はいくつものバネでつながっている。バネはナイフがもたらす力に比例して時間と共に弱くなるように設定されている。

筆頭著者のPhDのEric Heiden氏によると、DiSECtの特長は「微分可能なこと」で、実際の測定値からシミュレーションのパラメータを自動調整できるという。今日のロボット技術者にとって、現実とのギャップを埋めることは重要な課題であり、それを克服しなければ「ロボットはシミュレーションから抜けだして現実世界には行けないかもしれない」と語る。

切断技術を仮想から現実に移すには、シミュレータで現実のシステムをモデル化する必要がある。研究チームは実験の中で、実際にロボットがさまざまな食品を切断した時に加わる力のデータセットを活用し、リンゴやジャガイモを切る時のナイフの力のかかり具合を正確に算出することができた。

また、我々は物を切断するとき、上から刃を押し付けるだけでなく、前後に刃を動かすが、これはなるべく小さい力で切断しようとするからだ。こうした動きもシミュレータの設定を最適化させることで再現できた。

「切断プロセスの正確なモデルを作り、多種多様の組織が切断されるときに切断工具に作用する力を本物と同じように再現できることが大事だ。我々の手法では、各種材料に合うように自動的にシミュレータを調整して、力のかかり方について高精度でシミュレーションできる」とHeiden氏は語る。現在は、実際のロボットにこのシステムを適用させているところだ。

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