可動域を無限に延長できる、モジュール型磁気送りねじ機構を開発 名古屋大学ら

名古屋大学は2024年6月19日、同大学大学院工学研究科の研究グループが電気通信大学、鍋屋バイテックと共同で、少数部品構成で高伝達力となる「磁気ねじ」のための磁気回路構造を提案し、磁気ねじを用いた可動域を理論上無限に延長可能なモジュール型磁気送りねじ機構を開発したと発表した。半導体や食品、医薬品分野での安全な搬送や、位置決め装置をはじめとしたさまざまな機械の新しい設計解になり得るとしている。

搬送、位置決め機構、半導体製造装置や産業用ロボットなどさまざまな機械システムで用いられている直動機構の多くに、送りねじが採用されている。ねじ軸とナットによって構成される送りねじは、両者のねじ山の直接接触、もしくは中間で転がるボールを介して、動力が伝達される。

可動域を大きく延長するには、長いねじ軸を製作する必要があるが、長いねじ軸ではたわみが生じるため、複数のねじ軸を連結する方法が考えられる。しかし、ナットが連結部を円滑に通過するには、ねじ山が連続する精度の良い連結か、ガタを許容する設計が必要となる。

そこで研究グループは、物理的接触ではなく磁力により、非接触で動力を伝達する磁気ねじに着目した。磁気ねじは、ねじ軸とナットが物理的にかみ合う必要がなく、精度上の工夫なしで、モジュールを繋げていくことで簡単にねじ軸を連結できる。

研究グループが開発したモジュール型磁気送りねじ機構は、ねじ軸の連結に加え、ナットの連結で伝達力を向上できる。過負荷が与えられた際は、次のねじ山と磁気的結合が切り替わり、磁気的な弾性により柔軟に応答する。

研究の実現には、少数の簡単な形状の磁石で製作できる新提案の磁気ねじが要となる。新提案の磁気ねじは、従来は永久磁石で作り出していたらせん磁場を、らせん形状の軟磁性体(外部の磁界を取り除くと磁気がなくなる材料)によって置き換えて作り出している。

また、提案構造では、磁束集中構造と呼ばれる強磁力を生み出す構造を採用しているため、高伝達力化を達成している。シミュレーションにより、磁束集中を用いない構造と提案構造の伝達カを比較した結果、伝達力、剛性(ねじ軸回転量に対するナットへ働く力の傾き)が、同磁石体積/サイズで60%向上している。

新しい磁気ねじは、永久磁石の配置と着磁方向(磁石内部を流れる磁束の向き)を工夫し、強磁力を生み出す構造を構成しており、少数部品かつコンパクトながらも高伝達力を発生する。永久磁石は円弧形状かつ軸方向に着磁され、複雑な形状や着磁方向の永久磁石が必要ない。また、モジュール連結による超長ストローク化を達成している。ねじ軸とナット間の潤滑油も必要ない。

開発したモジュール型磁気送りねじ機構は、ねじ軸、ナットの持つねじ山同士が接触しないため、高速運動させた際も摩擦による発熱が起こらず、連続的な高速往復運動に優れる。また、各モジュールでねじ山の間隔を変えると、モーターが定速でも移動速度を変更できる。

今回の研究成果は、広い可動域で高速かつ低振動でクリーンな直動機構が実現するため、今後さまざまな機械の新しい駆動源として活用できる。

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高伝達力で可動域を無限に延長可能なモジュール型磁気送りねじ機構を開発 – 名古屋大学研究成果情報

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