- 2024-9-2
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飲料用缶にも使用されているアルミニウムと水を接触させると、水素と熱が発生する。しかし、この反応はアルミニウムが純粋な状態でのみ可能だ。アルミニウムは空気中ですぐに酸化するため、薄いバリアのように表面を酸化アルミニウムが覆ってしまう。水にアルミ缶を沈めても、すぐに水素が発生しないのはそのためだ。
今回マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、アルミニウムと海水を接触させることで水素が発生することを示した。アルミニウムは、ガリウムとインジウムからなるレアメタル合金で前処理することで、水素を発生することのできる純粋な状態になる。また、カフェインを加えることで、アルミニウムと海水の反応が促進されることも明らかになった。研究の詳細は、『Cell Reports Physical Science』誌に2024年7月25日付で公開されている。
真水を用いた研究チームの以前の研究では、ガリウム・インジウム合金による前処理によりアルミニウム表面の酸化物が除去され、水と自由に反応できるようになることが明らかとなった。しかし、ガリウムやインジウムは希少で比較的高価なため、スケールアップするためには合金の回収という課題に取り組まなければならなかった。
ガリウム・インジウム合金の回収という課題に取り組む中で、合金が水と反応するのを防ぐイオン溶液を使って、合金を回収し再利用できることがわかった。イオン溶液として藻や砂を取り除いた海水を利用したところ、ペレット状のアルミニウムと反応して水素が発生した。そして、その後ガリウム・インジウム合金を回収することができた。
しかし、ここで海水とアルミニウムの反応速度が、真水との反応に比べてかなり遅いという新たな問題が生じた。反応を促進する手法を探すためにさまざまな材料を試したところ、海水に「コーヒーかす」を加えると、反応がかなり速くなることがわかった。最終的に、カフェインに含まれるイミダゾールを加えた海水に小石大のアルミニウムペレットを入れることで、数分以内に水素が発生することが示された。
研究チームは、海洋船舶や水中車両で稼働する小型リアクターへの応用を考えている。海水は現地で調達するため、船に積むのは少量のガリウム・インジウム合金とアルミ缶などから再生したアルミニウムペレットだけだ。約40ポンドのアルミニウムペレットを搭載すれば、周囲の海水をくみ上げて水素を発生させモーターに電力を供給することで、小型の水中グライダーであれば約30日間電力を供給できると計算されている。