- 2024-8-28
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- EV(電気自動車), コバルトフリー, ニッケルフリー, マンガン, リチウムイオン電池, 名古屋工業大学, 横浜国立大学, 次世代電池, 正極材料, 研究
横浜国立大学は2024年8月27日、同大学および名古屋工業大学、島根大学の共同研究チームが、高エネルギー密度で、コバルトおよびニッケルフリーの電池材料を開発したと発表した。
欧米や日本で販売されているEV(電気自動車)搭載のリチウムイオン電池は、少量のコバルトを含んだニッケル系層状酸化物が正極材料として多く用いられている。これらの電池では、ニッケルの資源価格が低コスト化への障壁となっている。また、電気自動車の販売台数が急増している中国では、鉄系材料が正極材料に多く採用されている。これらは安価な一方で、エネルギー密度がニッケル系層状酸化物と比べて低い。
同研究チームは今回、ナノ構造を制御したリチウムマンガン酸化物正極材料(LiMnO2)を用いた。マンガンは鉄と同じく埋蔵量が豊富で、安価に使用できる。同材料では、エネルギー密度が800Whkg–1に達した。同発表によると、既存のニッケル系層状材料と同レベルのエネルギー密度だという。
材料合成には、一般的な固相焼成法(材料合成の前駆体に固体粉末を使用し、電気炉などで高温で焼成することで材料を合成する手法)を用いた。低コストでの大量合成が可能となる。加えて、急速充電特性にも優れており、約10分で8割程度の再充電が可能となっている。
横浜国立大学は、同材料が複合的ドメイン構造を有しているほか、比表面積の大きな試料を合成することで、電極特性に優れる材料となることを発見した。また、名古屋工業大学は同材料の相変化挙動に影響する因子を理論的に解析した。島根大学は、直方晶と単斜晶の複合的ドメインを有する材料の特徴的なナノ構造を解析した。
マンガン系材料では、鉄系材料で求められる炭素被覆も不要だ。今後さらなる研究が進むことで、鉄系材料以下のコストで高いエネルギー密度を有するリチウムイオン電池の実用化につながることが期待される。