飲料水の微生物汚染を検出するレンズレス蛍光装置を開発

Credit: Rijan Maharjan, Ashim Dhakal, Phutung Research Institute

ネパールのPhutung Research Institute、ブラジルのサンパウロ大学、イギリスのヨーク大学からなる国際共同研究チームは、レンズを使用しない新しい蛍光検出システムを開発し、飲料水中の微生物を高感度に検出できることを示した。研究成果は、『Optica』誌に2024年8月8日付で公開されている。この技術は、発展途上国や被災地のような、資源が限られた環境における低コストで使いやすい水質管理法に応用できる可能性がある。また、パリ五輪のトライアスロン競技が開催されたセーヌ川で注目されたような、水の安全性を迅速に評価しなければならない場合にも有用だ。

水中の微生物汚染を評価する現在の手法は、水サンプル中の微生物を培養し、有害微生物を定量化する必要がある。結果が出るまでに18時間以上かかることもあり、水の安全性を直ちに確認したい場合に適しているとは言えない手法だ。また、発展途上国では検査技師やインフラ、検査試薬が限られているため、この手法での水質検査は困難だ。さらに、従来の蛍光光度計は、特殊な紫外線透過ガラスでできた高価なレンズを使用しており、正確な位置決めが必要という課題もある。

新しい蛍光検出装置は、リアルタイムで水質評価が可能な、ポータブルで低コストな装置を目的に開発された。開発段階において、研究チームは水質モニタリング用途における光信号発生の基礎を詳細に調査した。その結果、画像イメージングを必要としない状況では、カメラや顕微鏡、望遠鏡などの機器に使用されている、光学レンズの存在が性能を低下させていることを発見した。

そこで、研究チームは1~2mm2のLEDと光学フィルターとフォトダイオードを組み合わせた検出器を用いて、レンズレス蛍光検出システムを設計した。このシステムは、紫外線を用いて有害微生物のタンパク質を励起し、その結果生じる傾向を検出するというものだ。感度実証試験では、水中微生物の蛍光タンパク質を1ppb以下のレベルで検出した。この値は、WHO(世界保健機関)が示す飲料水中の糞便汚染検出基準を満たしている。また、レンズを用いたシステムの2倍の強さの蛍光シグナルを生成することも示された。

研究チームは現在、フィールド試験用にポケットサイズのレンズレス蛍光光度計を開発中だ。また、複数のパラメータ測定を組み込むことで、特定の細菌汚染を検出しようと考えている。

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