- 2019-8-29
- ニュース, 化学・素材系, 技術ニュース
- アニール, ドレスデン工科大学, フラーレン, ホウ素結晶, ロシア原子核研究所, ロシア高圧研究所, 低温アニール, 価電子制御, 半導体, 大阪大学, 構造欠陥, 炭素系材料, 焼鈍, 研究, 除去方法, 電子材料
大阪大学は2019年8月27日、ロシア高圧研究所、ロシア原子核研究所、ドレスデン工科大学と共同で、結晶の構造欠陥に対する有効な除去方法を発見したと発表した。
半導体は、欠陥を制御することで正と負の両方の電子を持たせた電子材料だ。この欠陥の制御は、価電子制御と呼ばれ、母体結晶の格子位置に不純物原子を導入して行う。それに対し、母体結晶の格子位置とは違う位置に不純物が入ってしまう欠陥では、価電子制御には役に立たない。
一方、ホウ素結晶は、シリコンと同様に半導体であるものの、母体結晶原子のホウ素が格子間位置にランダムに配置されてしまう。さらに、ホウ素結晶は構造が固いこともあり、価電子制御して半導体材料とすることは難しかった。
今回の発見では、高温で水素を添加し、低温アニールで水素を離脱させることでホウ素結晶の規則的配置を実現した。具体的には、高温/高圧条件下でホウ素結晶を作成し、大量の水素を不純物として導入。その後、得られた試料を室温に戻し、中程度の温度でアニール(焼鈍)する。すると、水素が離脱すると同時に、それまでランダムに配置されていたホウ素原子が規則的に配置する。
研究グループはこの構造変化について、水素の拡散と母体原子の再配置という異なる現象の協力現象で、これまで固い材料では報告されたことはなかったと説明。また、規則的配置を持ったホウ素結晶の実現も、世界で初めてのことだという。
この欠陥除去方法は、ホウ素のみならずフラーレンに代表される炭素系材料など多くの固い高融点材料に適用可能だという。そのため、他の材料開発への応用も期待されるとしている。