米ジョージア工科大学は2024年7月23日、よくある一般的な2種類の塩を組み合わせることで、クリーンエネルギーを熱として貯蔵できることを実証したと発表した。これは建物の冷暖房システムに利用できるという。
日常生活において、室内を暖めたり洗濯乾燥機を使用したりする際に熱は欠かせない。しかし、気候変動問題に直面する現代では、建物でのエネルギー消費増加が深刻な問題となっている。現在、主に石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を燃やして熱を生産しているが、クリーンエネルギーへの転換が進むにつれ、現状を変えていく必要がある。
熱貯蔵の基本的なアプローチは可逆化学反応だ。同大学のAkanksha Menon助教授は、熱化学物質が正反応と逆反応の間でどのように作用するか、科学的に分かっていないことが多いことに気づき、塩の反応に着目した。
塩の分子はその構造内に一定数の水分子を保持できる。化学反応を誘発するために熱を加えて塩を脱水すると、気体として水蒸気が放出される。また、逆の反応を引き起こすために、塩に水分を吸収させて水和させ、塩の構造を強制的に膨張させることで水分子を取り込む。
しかし、このような膨張や収縮のプロセスが起きると、塩に大きな圧力がかかり、最終的には破損することになる。最初はきれいな球状の粒子であっても、脱水や水和のサイクルを数回繰り返すと、完全に粉砕されるか、過剰に水和して凝集し塊となる。つまり、時間経過により塩の蓄熱量が減少することになるため、長期的な蓄熱には不向きだ。
同大学の研究者たちは、この問題を解決するため、水に対してさまざまな反応をする塩を組み合わせた。2年間で6種類の塩を試験した結果、互いに補完し合う2種類の塩を見つけた。水分をよく吸収する塩化マグネシウムと、水和速度が非常に遅い塩化ストロンチウムを組み合わせることで、蓄熱性の向上につながった。
この研究の次のステップは、蓄熱用にこれらの塩を含むことができる構造を開発することだが、システムレベルの実証実験も計画されている。その1つは、充てん床反応器のドラムに塩を充てんすることだ。まず、熱風が塩を横断して流れることで塩を脱水し、蓄電池のように効果的に熱エネルギーをドラム内に貯蔵する。蓄えたエネルギーを放出するには、湿った空気を塩に吹き付けて結晶を水和させる。放出された熱は、化石燃料の代わりに建物内で使用できるといった仕組みだ。
最終的に、この技術は地球の気候に悪影響を及ぼさないエネルギーソリューションにつながる可能性がある。さらに、塩は広く入手可能でコスト効率の高い材料であるため、導入は迅速に進められる。塩を使う熱エネルギー貯蔵は、気候変動問題において重要な戦略である二酸化炭素排出量の削減に貢献できるという。
研究成果は、2024年5月9日付で『Journal of Energy Storage』オンライン版に掲載された。