サンドイッチのパンがヒント――卵白を使って海水から塩とマイクロプラスチックを除去する技術を開発

Image by Shaharyar Wani

プリンストン大学の研究チームは、海水から塩とマイクロプラスチックを安価に除去できる素材を卵白から作る方法を開発した。作製した素材は軽量、多孔質の素材であるエアロゲルで、水のろ過、エネルギー貯蔵、防音、断熱などさまざまな用途に応用できる。研究成果は『Materials Today』誌に2022年8月24日付で公開されている。

論文の責任著者であるプリンストン大学のCraig B.Arnold教授は、エアロゲルなど工学用途の新素材開発に取り組んでいる。Arnold教授は教授会の席で出されたサンドイッチのパンを見て、これこそが理想の構造であると今回の研究成果のアイデアを思いついた。

研究チームは、炭素を含んださまざまなパンの配合から、求めているエアロゲル構造を再現できるかを試した。最初は複雑な配合から始めて、最終的に卵白に含まれるタンパク質が求めている構造を導き出すことを明らかにした。

卵白はほぼ純粋なタンパク質のみで構成されており、凍結乾燥後に無酸素状態で900℃に加熱すると、カーボンナノファイバーにグラフェンシートが張り巡らされた構造をとる。この素材を用いて海水をろ過したところ、塩とマイクロプラスチックをそれぞれ98%と99%の高効率で除去できた。

高温で加熱する前に炒めたり泡立てたりした卵白を用いても、エアロゲルの効率は変わらなかった。また他の市販の類似タンパク質を使用してエアロゲルを作製しても、卵白と同じ結果が得られたという。

そのため食料と競合しない他のタンパク質を利用すれば、比較的安価に食料供給に影響を与えることなくエアロゲルを大量生産できる可能性がある。製造行程を改良して大規模な水質浄化に利用できるようになれば、低コスト、高エネルギー効率、高効果の新素材は水質浄化に大きなメリットをもたらす。

研究チームによると、水質浄化用途として最も安価な材料の一つである活性炭は、逆浸透膜の運転に多大なエネルギーと水を必要とするが、開発したエアロゲルは重力だけでろ過できるので水を無駄にすることがないという。また水質浄化以外に、エネルギー貯蔵や断熱など他分野への応用可能性も探っている。

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