- 2024-10-29
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- 5C, eScience, カリウム金属電池(Potassium Metal Battery:PMB), カリウム電池, デンドライト, ハイブリッド界面被膜, フッ化カリウム, リチウムイオン電池, 亜鉛, 再生可能エネルギー貯蔵システム, 反応性プレウェッティング技術, 大容量エネルギー貯蔵用電池, 学術, 東北大学
KeAi Communicationsは2024年9月19日、中国の東北大学の研究チームが、リチウムイオン電池に代わり得るコスト効率の高い電池として注目を集めているカリウム電池について、安全性と信頼性の面で最も大きな課題となる、陽極表面上のデンドライト形成を防止する手法を考案したと発表した。
反応性プレウェッティング技術を活用して、カリウム金属電極表面上に、フッ化カリウムと亜鉛から構成されるハイブリッド界面被膜を形成することによって、デンドライト成長を抑制するとともに電子伝導とイオン輸送を促進する。2000時間以上の安定した寿命と充放電3000サイクル以上にわたり、61.6mAh/gの高い電気容量を示すことが実証された。研究チームは、安全かつ低コストの高性能な大容量エネルギー貯蔵用電池に向けて、大きな可能性が得られると期待している。
リチウムイオン電池がスマートフォンから電気自動車まで幅広く活用されているが、リチウムによる発火の危険性や資源的に遍在するリチウムや一酸化炭素の安定供給性に対する懸念から、リチウムに代わるアルミニウムやナトリウム、亜鉛など地殻に豊富に存在する元素を用いる電池の開発が進められている。特に資源的に豊富なカリウムは、リチウムやナトリウムに比べて原子量が大きく電気容量を高めることが難しいことから、電池材料としては向かないと考えられてきたが、近年の研究で、電解液中のカリウムイオンの移動速度が速く、リチウムイオン電池と同等の出力が得られ、急速充放電性能も期待できることが明らかになり、研究開発が活発に行われるようになっている。
陽極に金属カリウムを用いるカリウム金属電池(Potassium Metal Battery: PMB)では、リチウム金属電池と同様に電気容量を著しく高めることが期待されるが、制御不能なデンドライト成長や界面の不安定性という問題があり、リチウム電池の場合と同様に黒鉛系陽極が検討されている。研究チームは、高い電気容量が期待できるPMBにおいて、金属カリウム陽極表面を安定化し、デンドライト形成を防止する手法の考案に挑戦した。
反応性プレウェッティング技術を用いて、金属カリウム電極表面にフッ化カリウムと亜鉛から構成されるハイブリッド界面被膜を形成した結果、フッ化カリウムはデンドライト成長を抑制する堅牢な電子トンネル障壁として機能し、亜鉛ナノ結晶は電子伝導とカリウムイオン輸送を促進することが確認された。フッ化カリウム/亜鉛ハイブリッド界面被膜を特徴とする電池は、デンドライトを形成することなく陽極表面が安定化し、電圧変動も極少化されて2000時間以上の安定した充放電サイクルを維持できることが実証された。また、充放電電流値5C(注:1Cは電池の全容量を1時間で放電する電流値、5Cはその5倍)条件において、3000サイクル以上にわたり61.6mAh/gの高い可逆容量を示した。
研究チームは「PMBの厄介なデンドライト成長の課題を解決でき、安全性を改善することが期待できる。イオンと電子の移動をバランスさせるハイブリッド界面被膜の設計によって、電池性能も向上でき、エネルギー密度と寿命を拡大する安全で信頼性の高いスケールアップ可能な手法となるだろう」と、同研究が大容量の再生可能エネルギー貯蔵システムを革新することに期待している。
研究成果は2024年4月の『eScience』誌に公開されている。
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