- 2024-10-22
- ニュース, 技術ニュース, 電気・電子系
- 光格子, 冷却原子気体, 次世代熱磁気デバイス, 理化学研究所, 理研, 研究, 磁気的量子ポイント, 量子シミュレーター, 量子ポイントコンタクト, 量子統計性
理化学研究所(理研)は2024年10月21日、早稲田大学、東京大学、中国科学院大学と共同で、極低温の原子気体を用いて、減衰しにくい磁気の流れを生み出す機構を発見したと発表した。
理研によると、絶対零度近くまで冷やした原子気体(冷却原子気体)を、対向するレーザー光の干渉で形成された光格子を使って、特定の位置に閉じ込める技術の研究が近年進んでいる。
近年、冷却原子系での熱エネルギーや磁気の流れを模倣する方法が実現しており、ナノスケールで制御された熱磁気発電素子や磁気メモリーなどの、次世代熱磁気デバイスの開発への活用が期待されている。しかし、同種のデバイスでは、磁気の流れが発熱を伴って減衰することが知られており、この減衰をいかに抑制できるかが課題だった。
今回の研究では、光格子を用いた冷却原子気体の磁気的量子ポイント構造を提案し、この量子ポイントコンタクトをトンネル伝導する熱と磁気の輸送理論を、非平衡場の量子論を用いて構築した。さらに、冷却原子気体の量子統計性が顕著となる場合に、量子ポイントコンタクトにおいて、減衰しにくく、長時間持続する磁気の流れが生成されることを明らかにした。
今回の研究成果は、物質設計の前に冷却原子気体を用いた量子シミュレーターによって、極低温/低磁場下の磁性絶縁体の新奇な熱磁気輸送の観測や制御が可能なことを示している。これを応用することで、次世代熱磁気デバイス開発上の課題を克服することが期待されるという。