東北大学は2024年11月1日、同大学と名古屋工業大学、大阪大学の研究グループが、グラフェン上を水が流れたときに起きる発電現象について、発電に適した水流の状態を実験と数値シミュレーションによって明らかにしたと発表した。効率的な環境発電システムの実現につながることが期待される。
炭素原子が網目のように六角形に結びついてシート状になっているグラフェンの上をわずかな水が流れると、発電現象が見られることがわかっているが、そのメカニズムは明確に解明されていない。
研究グループは、ガラスでグラフェンを挟み込んだマイクロ流路(全長約50mm、幅約3mm)を作製し、シリンジポンプで水流を加えた際の電圧を測定した。その結果、電圧波形は水流の印加に応答してON/OFFを繰り返し、水流が持続している間は発電が続いていた。また、グラフェンの位置を流路内で変化させた実験では、流入口からの距離に応じて起電力が大きく変化し、流路中央付近で最も高い電圧が発生することがわかった。
次に数値シミュレーションを用いて流動状態を解析したところ、不規則な流動状態から規則正しく流れる「層流」に遷移する過程で、大きな起電力が発生していることを確認した。これらの実験とシミュレーションの結果、流動状態が遷移する場所や、流動状態の遷移が生じる流路を用いることで、微小な水流による発電の高効率化が期待できることがわかった。
発電に最適な条件を確認したことで、生活環境でのわずかな水流を発電に活用できる可能性があり、小型で環境負荷のない新たな発電方法の開発につながると研究グループは期待している。
社会実装には高出力化やデバイスとしての設計が課題で、研究グループは今後さらに研究を進めるとともに、地下水や海洋での応用の可能性についても検討を進める。
研究成果は同年10月28日、米国物理学協会が発行する科学学術雑誌「Applied Physics Letters」にオンライン掲載された。
関連情報
微小水流が新たなエネルギー源に 注目材料グラフェン… | プレスリリース・研究成果 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-