従来比50%の電力で大気中から水を抽出するポータブルデバイス――飲料水確保に期待

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米オハイオ州立大学は2024年10月23日、大気中から飲料水を生成する新方式のデバイスを発表した。この技術は全世界で20億人以上と推定される、清浄な飲料水を利用できない地域の人々に希望をもたらす可能性がある。

国連の統計によれば、人間が安全に飲用できる淡水は地球上でわずか0.5%だという。世界の水源は戦争や環境汚染、気候変動により深刻化の一途をたどっている。このような状況下にある人々を支えるための、飲料水の採取手段が求められている。

開発したデバイスは、ニッケルチタンベースの除湿器だ。類似する従来型と比較して、構成が簡易で効率的な水の生成が期待できる。30分稼働させた場合、従来型より多くの水を大気から抽出する性能を持つ一方で、消費エネルギーは半分程度に抑えられた。

新規性は、材料の変形で発熱/吸熱する「エラストカロリック冷却(elastocaloric cooling)」技術にある。この技術によりエネルギー使用量が減少し、サイズも縮小、構造を単純化できる材料が使用可能になった。デバイスの寸法は、バックパックに収まるほどだ。

従来型との比較では、フィリピンやインドネシア、ハイチ、そしてオハイオなどの湿度の環境で、最も効率的に動作した。生成される水は飲用できるものの、デバイスを構成する3Dプリント製の部品が劣化して破片が混入する恐れがあり、現時点ではろ過が必要だ。

研究チームは現在、個人用途の試作機を製作しているが、将来的には世帯や地域社会全体のニーズに対応する大型化も視野に入れている。エネルギー効率を維持したまま、より大量の水を短時間で生成できる可能性があると説明している。

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A simpler, more efficient device for harvesting water from the air

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