原料の手混ぜで固体電解質の性能が劇的に向上 北大など研究グループ

北海道大学は2024年12月20日、東北大学などとの研究グループが、全固体電池に用いられる固体電解質を合成する際、材料を装置に入れる前に短時間の手混ぜをするだけで、合成された固体電解質のイオン伝導度が劇的に変化することを発見したと発表した。

固体電解質の合成では、ボールミル装置を使って原料を混合し、化学反応を進める手法がよく使われ、特に硫化物やハロゲン化物などの柔らかい固体電解質の合成では標準的な手法となっている。これまで、合成時間や回転速度、発熱の有無などの違いによる効果の差が検証され、議論されてきた。

これに対し研究グループは、これまでほとんど取り上げられてこなかった、装置に投入する前の手混ぜに注目した。実際には乳鉢と乳棒を使ってかき混ぜるだけの簡単な工程で、これを「予備混合」と名付けて、効果を検証した。

研究グループは硫化物固体電解質のLi7P3S11を使って、予備混合をしたときとしなかったときの違いをSPring-8で分析した。その結果、予備混合を行わなかった場合、昇温過程でLi7P3S11以外の結晶相も析出し、それが徐々にLi7P3S11へと変化した。一方、予備混合を行った場合は、Li7P3S11に近い前駆体ガラスの局所構造が得られ、Li7P3S11相が単一の結晶相として形成されていく過程が観測できた。さらに、予備混合を行ったものはイオン伝導度が約1桁向上することも確認できた。

また、近年発見されたナトリウムイオン伝導ハロゲン化物、NaTaCl6の合成でも予備混合の有無での違いを調べたところ、予備混合をしたほうが、イオン伝導度が5倍から7倍向上することがわかった。

なぜ、このような違いが生じるのかは解明されていないが、研究グループは「ボールミル器具や粉砕媒体表面への付着のしやすさの違いが、影響するのではないか」としている。

研究成果は2024年12月16日、米国化学会誌『ACS Energy Letters』にオンライン掲載された。

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新着情報: メカノケミカル合成前の手混ぜで固体電解質の性能が劇的に向上~「予備混合」の効能を実証~(工学研究院 准教授 三浦 章)

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