水深4000mの海底を自律走行――海洋の炭素循環を長期モニターする「Benthic Rover II」

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Image: © 2016 MBARI

MBARI(モントレー湾水族館研究所)の研究チームは、気候変動を考える上で重要となる海洋の炭素循環を長期間測定するために、自律走行ロボットローバー「Benthic Rover II」を開発した。水深4000mの海底で水温や水中酸素濃度、有機物の酸素消費量などを5年以上に渡って計測し、季節変動や長期的傾向を分析した。研究結果は、2021年11月3日付けで『Science Robotics』に掲載されている。

現在、化石燃料の使用、家畜の飼育、森林の伐採により毎年数十億トンもの二酸化炭素が大気中に放出されているという。陸上の植物だけでなく、海洋とその生物群集が過剰な二酸化炭素を吸収しているおかげで、我々は最悪の事態から免れているが、吸収された炭素は海洋の表層と深層の間で形を変えながら循環していることは分かっており、その詳細を理解することが非常に重要になっている。

MBARIの研究チームは25年に渡る開発の結果、深海で長期的に科学調査ができるBenthic Rover IIを完成させた。大きさは2.6×1.7×1.5mで、耐腐食性のチタンやプラスチック、耐圧性のシンタクチックフォームを使用し、深海6000mまで潜航可能だ。長期間運用するため、高い信頼性を備えたコンピューター制御システムとソフトウェアも備える。消費電力も「iPhoneと同程度」まで抑えている。

Benthic Rover IIは、海洋調査船「R/V Western Flyer」によって中部カリフォルニアの沖合225kmの地点に運ばれ、4000m下の調査サイト「Station M」に下ろされた。投下地点の平均的な深度は約4000mで、海底の生態系を研究するのに良好な場所だ。

海底に降りたローバーは、水温と酸素濃度を計測するとともに、海底に堆積した植物や植物プランクトン内部のクロロフィル(葉緑素)が放つ蛍光を検出する。また、泥の中に住む生物の酸素消費量を48時間に渡り計測する。動物や微生物が有機物を消化するときは、酸素を消費し、二酸化炭素を固有の割合で放出するため、酸素量計測は炭素循環の理解に重要だ。一連の計測サイクルは、10mずつ自律的に移動しながら何度も繰り返される。約1年ごとにデータ回収やバッテリー交換で引き上げられる以外、2015年11月から2020年11月まで、ほとんどの時間を深海での計測に費やした。

データからは、海底の堆積物が年々増加し、酸素消費量は季節で変動することも分かった。堆積物には、海洋表面から降り積もる「マリンスノー」も含まれる。マリンスノーはプランクトンの死骸や排泄物で、大気中の二酸化炭素から海洋の食物連鎖を経て形成されたともいえる。

「Benthic Rover IIは、グローバルモデルでは見落とされている、深海での短期的および長期的な重要な変化について、我々に重要な警鐘を与えた」と研究チームは語る。

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