- 2025-1-7
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- 3Dプリンティング, トリチウム, ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL), 二波長二光子重合(DW-2PP), 備蓄性能維持プログラム, 国立点火施設(NIF), 学術, 核融合発電, 燃料カプセル, 重水素
ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の国立点火施設(NIF)は2024年11月14日、高度な3Dプリンティングを利用して、核融合発電用の燃料カプセルを大量に生産する研究を進めていると発表した。燃料カプセルを大量に生産できれば、クリーンで無尽蔵の電源である核融合の実用化が近づく。
レーザー核融合実験施設であるNIFは2022年の点火実験により画期的な成果を実現したが、商業規模で核融合エネルギーを生産するためには、依然として大きな課題がある。最も高いハードルの1つが、燃料カプセルの製造である。カプセルは、核融合反応に使用される重水素とトリチウムを保持する。
実用的な発電所を稼働させるには、1秒間に10回の頻度で燃料カプセルに点火するため、1日あたり100万個近く必要になる。しかし、カプセルはほぼ完全な球形でなければならず、その要求精度はカプセルを地球と同じ大きさとしたとき、ロサンゼルスにある「ハリウッド」の看板より大きな欠陥は許されないほどで、現段階では1個の製造に数カ月を要する。
この課題に対処するため、LLNLでは、燃料カプセルを3Dプリントで作製する研究プロジェクトを立ち上げた。研究チームは、まず液体の重水素とトリチウムが毛細管現象によって均一な発泡層に浸透する湿潤発泡カプセルに着目した。既存のカプセルにおける重水素とトリチウムの積層構造は、「完成には細心の注意を払ったうえで最大1週間かかる」ためだ。
カプセルのプリントには、世界初となる二波長二光子重合(DW-2PP)を採用している。DW-2PPでは2つの異なる光源を用いることで、異なる材料を選択的に、かつ1マイクロメートル以下の解像度でプリントできる。これにより、湿潤発泡カプセルと内部の構造を厳密に制御できる。3Dプリントは、「このような複雑な形状を造形する唯一の手段となりうる」という。2024年にはNIFでの2回の実験において3Dプリントされたカプセルが使用されており、今後もさらなる実験での利用が予定されている。
LLNLは、3Dプリントを利用した燃料カプセルが核融合の実現につながるかはまだ不透明ながらも、LLNLとNIFの役割の1つである、地下核実験を行わずに核兵器の性能が維持されているか確認する、アメリカの「備蓄性能維持プログラム」を支援する重要なデータを、「既に生み出している」としている。
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