第三の磁性「交代磁性」のナノスケールイメージングを実現――デジタルデバイスを一変させる可能性も

英ノッティンガム大学は2024年12月11日、同大学を中心とした研究チームが、交代磁性(altermagnetism)という新しい種類の磁性の画像を初めて生成したと発表した。動作速度が従来の最大1000倍になる可能性がある新しい磁気メモリーデバイスの開発が期待される。

磁性体は、大半のコンピューターの長期メモリーや最新世代のマイクロエレクトロニクスデバイスで使われている。磁性体は重要な巨大産業を形成するだけでなく、世界的な二酸化炭素排出の大きな要因にもなっている。

これまでに強磁性体と反強磁性体の2つが磁性体としてよく知られていたが、近年、「第三の磁性体」として交代磁性体が注目を集めている。交代磁性体は強磁性体と反強磁性体それぞれの有利な特性を1つの材料が兼ね備えたものだ。

交代磁性の磁気秩序は独特で、磁気の微小な基本構成要素である磁気モーメントが、隣接する磁気モーメントと反平行に整列している。しかし、微小なモーメントを保持する結晶の各部分は、隣接する部分に対して回転している。これは反強磁性にひねりを加えたようなものだという。

研究チームは、この新しい第三の磁性が実際に存在し、顕微鏡デバイスで制御できることを示した。実験研究はスウェーデンにある放射光施設「MAX IV Laboratory」で実施された。巨大なドーナツのように見える施設で、X線を発生させるシンクロトロンと呼ばれる電子加速器だ。

テルル化マンガンを使用した磁性体にX線を照射すると、表面から放出される電子を特殊な顕微鏡で検出する。これにより、ナノスケールまで微細な解像度で、磁性の画像を生成できた。

交代磁性体は、マイクロエレクトロニクス部品やデジタルメモリーの速度を1000倍向上させる可能性を持っており、同時に、より頑丈でエネルギー効率に優れている。さらに、従来の強磁性技術では希少で有毒な重元素が必要とされるが、主要部品を交代磁性体に置き換えることで、重元素への依存を大幅に削減できる可能性もある。

ノッティンガム大学の上級研究員で研究論文の筆頭著者であるOliver Amin氏は、「われわれの実験研究は、理論的概念と現実世界での実現をつなぐ架け橋となりました。これが実用化に向けた交代磁性体開発への道を照らしてくれることを期待しています」と述べた。

研究の詳細は2024年12月11日付で『Nature』に掲載された。

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