オブジェクト指向とは?その基本概念と重要性を解説

オブジェクト指向とは、プログラミングにおける概念の1つで、非常に多くの言語に取り入れられています。プログラミング言語をマスターするためには、このオブジェクト指向の理解が欠かせません。しかし、オブジェクト指向は専門用語が多く難解で、学習に苦労する方が多いのも事実です。

この記事では、オブジェクト指向の基本概念や用語の解説、代表的なオブジェクト指向プログラミング言語について解説します。

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オブジェクト指向の基本概念

オブジェクト指向とは、効率的にシステムを構築するために、多くのプログラミング言語で取り入れられている概念です。具体的には、役割を持つ「オブジェクト(モノ)」を「クラス(設計図)」ごとにまとめ、モノを組み合わせてシステムを構築する考え方を指します。

オブジェクト指向は、自動車製造を例にすると理解しやすいでしょう。車には多くの部品が使われています。例えばタイヤやドアといったさまざまな車種に転用できる部品を開発しておけば、共通する部分は転用部品を使い、後はそれぞれの車種で独自の機能や部品を作ることで、効率的に自動車を製造できます。この転用できる部品が「オブジェクト」に当たるものとなります。この考え方をプログラミングに落とし込んだものが、オブジェクト指向です。

プログラミングと設計、それぞれにおけるオブジェクト指向のニュアンスの違い

通常、システムやソフトウェアの開発は以下のような流れで進行します。

・要件定義:どんなシステムを作るか決める
・設計:システムの構造や設計方法を決める
・プログラミング:設計に基づいて実際のプログラムを作る
・テスト:作成したプログラムが正常に動くかテストする

このうち、オブジェクト指向は「設計」と「プログラミング」の段階で生かされています。二つの段階におけるオブジェクト指向の考え方に大きな違いはありません。

ただし、設計段階ではシステム全体をより俯瞰的に考える、プログラミング段階ではより具体的、実務的に考える必要がある、という点が異なります。

オブジェクト指向の用語解説

オブジェクト

オブジェクトは直訳で「モノ」や「対象」といった意味です。プログラミングにおいては、共通点を持つデータと処理を集めてまとめたものを指します。

自動車で例えると、車種や色、エンジン性能といった「データ」と、走行する、停止するといった「処理」をまとめてオブジェクトと呼びます。

クラス

クラスは、オブジェクトの設計図のようなものです。共通するオブジェクトはクラスとしてまとめられます。ゼロからシステムを構築する場合と比べ、設計図を用いることで効率的に作れるようになります。

クラスの中には、後述する「メソッド」や「プロパティ」といった、設計に必要な情報が含まれます。

メソッド

メソッドとは、オブジェクトが持つ「処理」のことを指します。自動車でいえば、走行する、停止する、曲がるといった動作がメソッドに当たります。

メソッドを呼び出すことで、オブジェクトは特定の処理を実行できるのです。

プロパティ

プロパティとは、オブジェクトの特徴をデータとして表したものです。自動車で例えると、車種や色、燃費性能、走行距離などのデータがプロパティに当たります。

プログラムの中にプロパティの変数を設けることで、一部のデータのみが編集可能となり、不用意にデータを編集できないようになります。

インスタンス

クラスを実際に使用できるように実体化させることや、実体化されたもの自体をインスタンスと呼びます。

「自動車」という抽象的なクラスの中からプロパティやメソッドを組み合わせて、「青いセダン」「白いトラック」など具体的な車(インスタンス)を製造するイメージです。

オブジェクト指向の三大要素

オブジェクト指向には「三大要素(三原則)」と呼ばれるものがあります。プログラミング言語を習得するためには、これらの要素を正しく理解する必要があります。

継承

継承とは、コードを再利用しやすくするために、共通するプログラムをまとめることです。既存のクラスの要素を派生したクラスへ受け継ぎ、細分化します。継承元のクラスは「親クラス」、派生して作ったクラスは「子クラス」などと呼ばれます。

例えば、「自動車」という親クラスの下に「セダン」という子クラスが存在するイメージです。「セダン」のクラスでは、「自動車」のクラスが持つ部品や性能といったプロパティやメソッドをそのまま使用できます。

継承を活用することで、より効率的なプログラミングが可能になります。

ポリモーフィズム

ポリモーフィズムは「多様性」や「多態性」と訳される単語です。プログラミングでは、同じメソッドの指示を受けても、クラスによって異なる振る舞いをすることを指します。

例えば、自動車において「アクセルを踏むと加速する」というメソッドは共通していますが、車種やメーカーなどのクラスによって加速度は異なります。しかし、プログラマーは同じ名前のメソッドとして処理するため、作業を効率化できるのです。

カプセル化

カプセル化とは、オブジェクトのデータや処理を、カプセルに入れるように隠すことです。カプセル化することで、オブジェクトが勝手に編集されないよう守ることができます。

この処理により、不用意にプログラムをいじって壊してしまうリスクが低減されます。また、誤作動や外部から不正アクセスされた際の対策としても有効です。

オブジェクト指向プログラミング言語の比較

現在よく使用されている代表的なプログラミング言語には、JavaやC++、Python、Rubyなどがあります。これらの言語はそれぞれ異なる特徴を持ちますが、オブジェクト指向という点で共通しています。ここでは、それぞれのプログラミング言語の特徴を見ていきましょう。

Java

Javaは、最もポピュラーなオブジェクト指向言語の1つです。ソースコードを修正しやすくセキュリティ性も高いことから、ビジネスにおいて人気が高い言語となっています。

JavaはOSに依存せず汎用性が高いため、幅広い用途で使われています。特に、Androidアプリやデスクトップアプリの開発でよく使用されます。

また、Javaは習得しやすいプログラミング言語としても知られており、学習に役立つサイトや本も多数存在します。求人数も多く、プログラミングで手に職を付けたい初心者にお薦めの言語と言えるでしょう。

Python

Pythonは1990年に登場した歴史あるプログラミング言語で、世界中で広く使用されています。Webアプリやスマートフォンアプリ、ゲームなどのほか、AI(人工知能)の開発にもよく使われているプログラミング言語です。

Pythonはコードがシンプルで書きやすく読みやすいため、初心者でも扱いやすいことが特徴です。学習のための書籍やコミュニティーも充実しており、習得しやすいでしょう。

Ruby

Rubyは1995年にリリースされた日本生まれのプログラミング言語で、主にWebアプリ開発で使われています。

Rubyはシンプルさと生産性の高さを重視していることから、コードが簡潔で、覚えることもそれほど多くありません。日本発祥の言語であるため日本語のノウハウ本なども多く、初心者にとって学習しやすいプログラミング言語の1つです。

C++

C++は、C言語にオブジェクト指向を取り入れて改良したプログラミング言語です。そのためC言語と互換性があります。C言語は家電製品などのプログラムによく利用されており、C++はスマートフォンアプリやゲームなどで多く採用されています。

しかし、C++を使いこなすためにはマスターすべき要素が多く、初心者には習得しにくい言語とされています。

オブジェクト指向のメリット・デメリット

メリット

オブジェクト指向のプログラミング言語には、以下のようなメリットがあります。

・プログラミングを効率化できる
・プログラムを修正しやすい
・不具合の原因を特定しやすい

オブジェクト指向のプログラミングでは、共通するオブジェクトをクラスとしてまとめ、さまざまな場面で再利用することができます。そのため、同じコードを何度も書く必要がなく、効率的にプログラミングできるのです。

こうしたオブジェクト指向の特徴は、プログラムの開発後も生かされます。オブジェクト指向の言語では、特定のメソッドを変更すればそのクラスのオブジェクト全てに適用されます。大部分の処理を使い回せるため、もし開発後に修正点が出てきた場合や仕様変更が発生した場合も、修正の手間が少ないのです。

また、オブジェクト指向のプログラミング言語は不具合の原因を特定しやすいというメリットもあります。オブジェクト指向ではデータや処理をクラスごとに管理するため、エラーやバグが発生した際に全てのコードを調べる必要はありません。そのため、復旧にかかる時間とリソースを大幅に削減できます。

デメリット

さまざまなメリットがある一方で、オブジェクト指向には以下のようなデメリットも存在するため、注意しましょう。

・習得するために時間やコストがかかる
・オブジェクト指向に精通しているエンジニアが少ない

プログラマーとして活躍するためには、オブジェクト指向を理解することが不可欠です。しかし、その概念や専門用語は難解で、初心者にとっては習得が難しいでしょう。オブジェクト指向の言語をビジネスレベルで活用できるようになるまでは、ある程度の時間と学習コストがかかります。

こうした難解さから、オブジェクト指向を深くまで理解しているプログラマーは希少です。

しかし希少性が高いということは、求職者にとってはチャンスになります。オブジェクト指向をしっかり理解していると採用されやすくなるだけでなく、好待遇を受けられるといったメリットもあるでしょう。

まとめ

オブジェクト指向を取り入れたプログラミング言語は、非常に多くの開発現場で使われています。プログラマーとして活躍し、キャリアアップを目指したい場合は、オブジェクト指向についてしっかりと学習しましょう。

しかし、オブジェクト指向では抽象的な概念や用語も多く登場するため、正確に理解しているプログラマーは多くありません。特にプログラミング初心者の方にとってはつまずきやすいポイントです。

だからこそ、オブジェクト指向の考え方を身に付けることで、他のプログラマーと差別化できます。ぜひオブジェクト指向をマスターし、キャリアアップや転職活動に活用しましょう。

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fabcross for エンジニア 編集部

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