- 2025-1-30
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- Neuron, カリフォルニア工科大学, コンピュータ, タイピング, ナビゲーション, ニューロン, 会話, 定量化, 思考速度, 感覚システム, 神経科学者, 科学文献, 脳
米カリフォルニア工科大学の研究者たちは2024年12月17日、人間の思考速度の定量化を試みた結果、毎秒10ビットと算出したことを発表した。この研究成果の論文は、同日付けの『Neuron』誌に掲載された。
人間の感覚システムが周囲の環境から収集する情報量は、データ量に換算すると毎秒10億ビットに達する。この速度は、今回定量化した思考速度の約1億倍に相当する。この研究は神経科学者らに、「感覚システムが何千もの入力を一度に処理する一方で、なぜ我々は一度に一つのことしか考えられないのか?」という課題を提起する意味合いがある。
今回の研究では、人間の行動のうち、読み書き、ビデオゲーム、マジックキューブの解き方などに関する膨大な科学文献に、情報理論分野のテクニックを適用した結果、思考速度を毎秒10ビットと算出した。
この思考速度は一見すると極めて低く見えるが、人間は1兆個の感覚から、わずか10ビットの情報を常時取り出し続けていることになる。その10ビットを使って周囲の世界を認識し、さまざまな意思決定をしている。
脳を構成する850億以上のニューロンのうち、3分の1が高度な思考に特化して、大脳皮質に位置する。実は、ニューロン自体は毎秒10ビット以上の情報を伝達できるが、実際の「一度に一つのことしか処理できない」という制約は、脳の進化過程に起因するという。
神経系を持つ最初期の生物は、脳を「ナビゲーション」機能として、食べ物に向かう移動や、捕食者からの逃避行動に使用していたと考えられる。研究者らは、人間の脳がこのような単純なシステムから進化したなら、前述の制約も納得できると説明している。
これまで、人間の脳とコンピューター間のインターフェースが実現すると、通常の会話やタイピングよりも早く交信できるとの期待があった。しかし今後、この研究成果が明らかにした毎秒10ビットという速度が開発に影響を与える可能性があるという。