- 2023-3-8
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日本電信電話(NTT)は2023年3月6日、東京大学および理化学研究所と共同で、5Gなどの商用光通信テクノロジーを光量子分野に適用させる新技術を開発し、光通信用検出器を用いて43GHzの量子信号をリアルタイムで測定したと発表した。同発表によると、43GHzでのリアルタイム量子測定は世界最速だという。
昨今、既存のコンピュータでは不可能なレベルの並列計算が可能な、量子コンピュータの研究開発が進んでいる。
特に、光子が高速で飛来する「フライングキュービット」と呼ばれる進行波量子ビットを用いる、測定誘起型の光量子コンピュータが注目されている。同方式により進行波量子ビットを時間軸上に並べることで、装置の大型化や素子の集積化を行わずに大規模化できる。
また、同方式は光通信テクノロジとの親和性が高く、高速なクロック周波数での量子計算が期待されている。
一方で、同方式では高速光通信デバイス全てを光量子コンピュータに用いることができない点が課題となっていた。例えば、光通信用の100GHz超の高速なディテクタを光量子状態の測定に用いると、光損失の大きさにより光量子状態が崩壊してしまう。
このため、特別に設計した光損失が少ない低速なディテクタを用いる必要があり、測定誘起型量子操作においてクロック周波数を制限する要因となっていた。
今回の研究では、光パラメトリック増幅器を用いて光量子情報を保ちながら光を増幅する手法を開発した。同手法の一例として、市販の高速通信用ディテクタを光パラメトリック増幅後に使用し、高速に信号を測定する手法を考案している。
光量子状態を光損失の影響を受けないレベルまで増幅させることで、光量子分野への光通信テクノロジの適用が可能となった。
今回の実験では、NTTが開発した直接接合型周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)導波路による光パラメトリック増幅器を使用している。同増幅器は、約3000倍と高い増幅率を有しており、信号対雑音指数も約20%と小さい。
今回開発した光通信用43GHzディテクタとリアルタイムオシロスコープを用いて、スクイーズド光の振幅を測定したところ、量子ノイズ圧縮率が約65%であることが判明した。光量子コンピューティングに最低限求められる量子ノイズ圧縮率である60%を超える値となっている。
この結果により、既存の技術と比較して1000倍以上のクロック周波数で動作する量子演算が実現可能であることが示された。
3者は今後、今回開発した技術を用いて、100GHz帯域100マルチコアを有するスーパー量子コンピュータの実現を目指す。
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