- 2025-1-22
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産業技術総合研究所(産総研)は2025年1月21日、物質・材料研究機構(NIMS)との共同研究チームが、性能が向上した窒化物圧電材料を作製したと発表した。
スマートフォンなどでの無線通信では、近年高い周波数帯域が用いられており、対応可能な周波数フィルターが求められている。周波数フィルターの一種である弾性波フィルターは圧電材料が採用されており、高周波数帯域の通信では高い圧電性能が必要となる。
弾性波フィルターでは、窒化アルミニウム(AlN)にスカンジウム(Sc)を添加したScAlNが、圧電性能の高さから採用されている。今後、数GHz以上とより高い周波数帯域に対応するにあたり、ScAlNのさらなる圧電性能の向上が期待されている。
今回の研究では、ScAlNの薄膜作製時にルテチウム(Lu)金属を下地層として導入し、圧電性を有するウルツ鉱相(ウルツ鉱構造で構成される六方晶系の結晶相)の結晶性や配向性の向上を図った。Luも六方晶系であるため、ScAlNの結晶性や配向性の維持を促進する効果を想定している。
結果として、AlNへのSc固溶量が50.8mol%に向上した。以前は、43mol%が最大のSc固溶量と考えられていたという。
作製した薄膜の断面組織を電子顕微鏡で確認したところ、Luの下地層を導入したScAlN薄膜では、ウルツ鉱構造の結晶性や配向性が向上していることが判明した。
実際の圧電定数は35.5pC/Nに達している。同発表によると、2018年に報告された41mol%のSc固溶量における31.6pC/Nを超えて、窒化アルミニウム系圧電材料では世界最高となる圧電定数に至ったという。
今回の研究成果により、弾性波フィルターの性能向上につながることが期待される。また、AlNは自動運転などに用いる距離センサーへの応用も検討されているため、センサーの感度向上にもつながる可能性がある。
同研究チームは今後、薄膜の膜厚の最適化など、実用化に向けた技術開発に取り組む。また、ScAlN薄膜により高濃度のScを含有させる技術のさらなる進展や、他の材料系への展開も図る。