- 2019-2-27
- 制御・IT系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Adrian Dyer, Science Advances, ミツバチ, ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT), 人工知能(AI), 学術, 短期記憶(ワーキングメモリ), 長期記憶
ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の研究チームが、ミツバチが足し算や引き算という算数のメカニズムを理解し、簡単な計算問題なら解けることを発見した。ミツバチの小さな脳でも計算を行えることを示した今回の研究成果は、人工知能(AI)の学習速度の向上に大いに貢献する可能性がある。研究結果は2019年2月7日の『Science Advances』誌に掲載されている。
発表によると、チンパンジー、アカゲザル、ベルベットモンキー、ヨウム、ハト、蜘蛛など、人間以外にも計算能力を持つ生き物がいることはすでに報告されている。ミツバチについても、ゼロ(0)の概念を理解できることが、これまでの研究で分かっていた。だが、計算能力の有無についてはまだ明らかになっていなかった。
そこでRMITの研究チームは、ミツバチが足し算や引き算を理解できるかどうかを証明するための実験を行った。実験では、Y字の形をした迷路を用意。分岐点に問題を設置し、岐路の一方に砂糖水を置き、他方には苦いキニーネの溶液を置いた。ミツバチは正解を導けられれば、砂糖水の置いてある道に進める。
実験で用意された問題は次のようなものだ。迷路のスタート地点(Y字の底)には1~5個のマークが描かれている。マークは青色か黄色のどちらかで、青色なら+1、黄色なら−1を意味する。そして迷路の分岐点では岐路の一方の入口は正解の数、すなわちスタート地点に描かれたマークの数よりも1個だけ多い数か1個だけ少ない数のマークが描かれており、もう一方の入口には不正解の数のマークが描かれている。
仮にスタート地点のマークが青色なら、分岐点ではマークの数が1個多いルートを選ばなければ、砂糖水のあるゴールにたどり着けない。逆に、スタート地点のマークが黄色ならゴールに行くにはマークの数が1個少ないルートを選ばなければならない。この問題を解くには、長期記憶と短期記憶の両方を伴う高度な認知機能が要される。
実験では入口のマークの数と色、分岐点の問題をランダムに、またミツバチが一方の通路だけを通ることがないように切り替え、ミツバチに何度も挑戦させた。研究チームによると、ミツバチは100回以上の試行を経て、青色が+1で黄色が−1であることを理解し、最終的に迷路の問題を解けるようになったという。ミツバチが問題のルールを学ぶのにかかった時間は4~7時間だった。
算数の問題を解くには、解法を長期記憶において覚えておきながら、短期記憶(ワーキングメモリ)で記号を処理する能力が求められる。今回の発見は、ミツバチの小容量な脳でも同様の能力を発揮できることを示した。RMITのAdrian Dyer准教授は、「もし計算に大容量の脳が必要でないのなら、AIの学習性能を向上させるための新手段として、長期記憶と短期記憶を組み合わせた方法を見出せるかもしれない」と述べている。