名古屋大学は2018年6月7日、低温度差スターリングエンジンを非線形力学系としてモデル化し、その回転メカニズムを理論的に説明したと発表した。
身の回りの熱エネルギーを利用する技術は、持続可能社会の基盤として、今後重要とされる。中でも、手のひらの温度と室温程度の温度差でも動く低温度差スターリングエンジンは、その一技術として注目されている。しかし、同エンジンが温度差によってどのようなメカニズムで回転するのか、単純かつ本質を捉えた説明は与えられていなかった。
そこで同研究では、エンジンのダイナミクスを再現するシンプルな運動方程式を導出。エンジンが「温度差で駆動する非線形振り子」として記述できることを明らかにした。そして、運動方程式の解から、エンジンの運動には、回転状態と静止状態の2つ状態が存在することを示した。特に、回転状態は孤立した周期解であるリミットサイクル、静止状態は時間変化しない解である固定点に対応し、ある温度差を境にリミットサイクルが消失、つまりエンジンが回転しなくなることを解明した。
また、このエンジンの回転運動の消失は、解の分岐現象であり、分岐シナリオの成立は、低温度差スターリングエンジンにおいては初めて示されたことだという。
そして、同研究で得られた成果は、同エンジンの理解/制御/設計に重要な知見を与えるとし、この予測を検証する実験が望まれるとしている。また今後、他のエンジンの記述にも同研究のアイデアが応用され、エンジンの物理の発展に貢献することが期待されるとしている。