- 2016-12-16
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- 2D TDM, UCF, スーパーキャパシタ, セントラルフロリダ大学, 遷移金属カルコゲナイド2次元結晶, 電気二重層コンデンサ
スーパーキャパシタでスマホ充電、3万回の連続使用
米セントラルフロリダ大学(UCF)の研究チームが、小型でありながらエネルギー貯蔵量の大きなスーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサ)を作る新プロセスを開発した。このスーパーキャパシタは柔軟な上に、劣化せずに3万回以上繰り返し充電できる。将来的にはスマートフォンや電気自動車など、広範囲の技術分野を革新する可能性がある。スマートフォンに至っては、数秒での充電が可能になるという。
スーパーキャパシタとは、数10mF以上の非常に大きな静電容量があるコンデンサのことをいう。電解液の電極周辺に形成される逆の極性を持つ層(電気二重層)を誘電体の代わりとして利用し、蓄電量を高めていることから、電気二重層コンデンサ(EDLC)とも呼ばれている。
具体的には、正極と陰イオン、負極と陽イオンの吸着と脱着を利用し、充放電を行う。そのため、スーパーキャパシタは、化学反応によって電荷を蓄える二次電池よりも短時間で充放電できる。その上、劣化が少なく万単位のサイクルの充放電が可能で製品寿命が長いという利点がある。
しかし、リチウムイオン電池と同等のエネルギーを貯蔵するスーパーキャパシタを作ろうとすると、大変大きなものになってしまい、木材からスーパーキャパシタを作るという研究がなされるほどコストがかさんでいた。そのため、これまでスーパーキャパシタの小型化を目標に、たった数原子ほどの厚さのナノマテリアルである2次元結晶を利用できないかと研究されてきた。
スーパーキャパシタへの2D TDMの適用を可能に
2次元結晶は、1原子層のグラファイトであるグラフェンが2004年に発表されてから、大きな注目を集めるとともに、多種多様な結晶へと展開されている。その中でUCFの研究チームは、特異なバンドギャップ構造で応用が期待されている遷移金属カルコゲナイド2次元結晶(2D TDM)をスーパーキャパシタに適用する実験を継続してきた。
UCFナノサイエンス技術センターと材料科学工学科に所属するYeonwoong Eric Jung助教授は「2D TDMを通常の材料と組み合わせてスーパーキャパシタを作るのは大変ハードルが高く、この分野でのボトルネックだった。だが、われわれはこれを打開するシンプルな化学合成法を開発した」と説明する。
研究チームは今回、外側を2D TDMでコーティングされた何百万ものナノワイヤから構成されるスーパーキャパシタを作り出した。同スーパーキャパシタの内側芯部は導電性が高く、電子の高速輸送により高速の充放電を可能にする。そして均一にコーティングされた2D TDM外殻部は、高エネルギー密度と高電力密度を実現する。
研究チームの一員であるポスドク助手のNitin Choudhary氏は、「2D TDMを使ったこのスーパーキャパシタをバッテリーと代替できるなら、スマートフォンを数秒で充電できるようになる。加えて、1週間以上再充電せずに済むようになるだろう」と語る。
同氏は続けて「われわれの材料は、エネルギー密度や電力密度、サイクル寿命において世界中の他の材料を凌駕している」と説明。リチウムイオン電池のサイクル寿命は1500回以下だが、研究チームが開発したスーパーキャパシタは3万回再充電しても劣化しない。そのため、スマートフォンを18カ月くらい使い続けると、劣化によりバッテリーの減りが速くなりがちだが、その問題を大幅に緩和できるという。
Jung氏はUCFの技術移転室と協力し、開発した新手法を特許化しようとしている。2D TDMを用いたスーパーキャパシタは、スマートフォン以外にも他の電子装置に利用できる。また、電気自動車に関しては、大電力や高充電速度において大きなメリットがある。そして、このスーパーキャパシタは柔軟なので、ウェアラブル技術にも大きな進歩をもたらし得る。
同氏は今回の研究成果について、「まだ商業的な実用化がすぐできる段階ではない。だが、コンセプトの正しさは実証できた。広範囲な分野に大きなインパクトを与える可能性がわれわれの研究にあることは明らかだ」と語っている。
進化するスーパーキャパシタ、その展開やいかに
なお、スーパーキャパシタには、電気二重層コンデンサの他にも、擬似キャパシタと呼ばれるものもある。貯蔵可能なエネルギー密度が低く、長時間蓄電できないことが、電気二重層コンデンサの欠点だ。擬似キャパシタは、その欠点を補うスーパーキャパシタになることが期待されており、研究が盛んに進められている。
この欠点を電気二重層コンデンサのままで改善する研究も行われている。近年の動向としては、金属ナノ粒子で紙のセルロース繊維をコーティングしてスーパーキャパシタの電極とするという画期的な研究成果が報告されている。