産業技術総合研究所(産総研)は2017年2月2日、シリコーンなどの有機ケイ素材料の主骨格を形成しているシロキサン結合を、同一の反応容器内で選択的に複数個形成できる技術「ワンポット合成技術」を開発したと発表した。
分子レベルで均一な構造を有する有機ケイ素材料を開発するには、連続する複数種類のシロキサン結合を精密につなぐ合成技術が必要となる。そこで産総研は今回、3つの触媒反応(イリジウム触媒によるシリルエステルのヒドロシリル化・ホウ素触媒による転位反応・ホウ素触媒による脱炭化水素縮合)を1つの反応容器内で逐次的に起こす技術を開発し、2種類の連続するシロキサン結合の精密な形成を可能にした。
従来の手法で構造制御シロキサン化合物を作るには、多段階に合成を進める必要があった。また、副反応による目的外生成物や副生成物を取り除くために、各段の反応ごとに蒸留や精製などの別プロセスが必要とされ、工程全体が煩雑なものになっていた。
だが、今回開発されたワンポット合成技術では、加えるジヒドロシランやトリヒドロシランの順に応じた構造制御シロキサン化合物を一挙に合成できる。さらに、各段階での単離精製や反応容器の洗浄などの工程を大幅に減らすことも可能になる。その上、イリジウム触媒とホウ素触媒をはじめ、原料のシリルエステル、ジヒドロシラン、トリヒドロシランの入手が容易という利点もある。
ワンポット合成技術を改良すれば、シリコーンの架橋構造の精密制御や、反応性官能基を導入する箇所を分子レベルで精密に制御し、疎密の生じない均一な有機ケイ素材料を創出できる可能性がある。産総研は今後、開発した技術を応用することで、高機能・高性能シリコーン材料を中心に材料の開発を進める予定だ。