東北大学は2017年2月28日、DNAやタンパク質などの生体分子からなる「分子機械」を人工細胞膜内に統合し、信号分子を認識し変形機構を制御する人工分子システム「アメーバ型分子ロボット」を開発したと発表した。
化学や合成生物学の分野では近年、センサやプロセッサ、アクチュエータなどを生体分子で作製する技術が確立しつつある。分子ロボットは、生体分子から作られたこれらの分子機械を人工細胞膜内に統合したものだ。体内などの極小・複雑な環境下で精密に命令通りに働けるロボットとして、細胞レベルでの診断・治療や環境汚染のモニタリングなどへの応用が期待されている。
東北大学が開発したアメーバ型分子ロボットは、アメーバのように動作する数十μmの分子ロボットだ。タンパク質で構成された「分子アクチュエータ」と、DNAで作製した「分子クラッチ」で構成されている。信号DNAの入力に応じて、分子アクチュエータからの力の伝達を分子クラッチが切り替え、ロボットの変形が制御される仕組みだ。停止DNA信号を入力すると静止状態になり、開始DNA信号を入力すると変形状態になる。
この分子ロボットは、まだプロトタイプの段階で、その機能は変形のONとOFFを切り替えられることに限定されている。だが東北大学は、本機をプラットフォームとしてさまざまな分子機械を組み込むことで、より高度な機能を持った分子ロボットを開発できる可能性があるとしている。