九州大学は2017年3月30日、白金の代わりにポリマーや無機金属酸化物を使って、高い活性を持つ燃料電池用触媒の開発に成功したと発表した。白金を使用しない燃料電池の開発につながる可能性があるという。
九大はこれまでに、カーボンナノチューブをポリマー(ポリベンズイミダゾール)で被覆し、白金粒子を担持した触媒の作製方法を編み出した実績がある。今回の研究では、その作製方法を無機金属材料に応用した。
電導性が高い高純度多層カーボンナノチューブをポリマーで被覆し、この上にスピネル型無機金属酸化物(NixCo3-xO4)のナノ粒子をソルボサーマル法で作製。そして、この方法で作製された触媒が、非常に効率的な酸素還元反応と酸素発生反応を示し、耐久性も高いことを突き止めた。
トヨタが2014年12月に発売した燃料電池自動車「MIRAI」の希望小売価格は723万6000円(税込)。高価な燃料電池自動車を低価格で販売できるようにする上で、課題の1つになるのが白金の使用量だと言われている。白金の価格は2017年3月30日時点で1g当たり約3800円。燃料電池自動車には小型車でも30g前後、大型車になると150gほどの白金が必要になると言われており、白金の原材料費だけでも11~57万円ほどがかかる計算になる。
そこで燃料電池自動車の価格を抑えるため、白金に代わる触媒が探されてきた。無機金属酸化物は、酸素還元反応、酸素発生反応、水素発生反応などの基幹反応の触媒として注目されてきたが、電導性の低さや触媒活性サイト面積の小ささから、触媒能が十分でないと見られてきた。
本研究は、九州大学大学院工学研究院/カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)の中嶋直敏教授、藤ヶ谷剛彦准教授、Jun Yang 特任助教の研究グループによるもの。詳しい内容は同日に、「Scientific Reports」で公開された。