東京大学と科学技術振興機構(JST)は2017年5月25日、薄く柔らかく軽量なモーターを作製したと発表した。銀ナノインク回路を印刷してヒーターとセンサーを作製。プラスチックフィルムに封入した液体を温め、蒸発による体積変化を駆動源として利用する。やわらかく薄い特徴を生かして「ソフトロボット」のアクチュエーターとして応用できる可能性がある。
ソフトロボットと呼ばれる柔らかなボディを持つロボットは、生物に似た動きや、人と衝突したときの安全性などから、人間と共存しやすいロボットとして近年急速に研究が進展している。しかし関節などの駆動源には、硬くて重い電気モーターを使うか、ポンプやバルブでかさばる空気ポンプが必要。柔らかさを満たした上で小型・軽量化するには多くの課題がある。
研究グループは今回、低い温度で気化するアセトンや3MTM NovecTM 7000といった液体をプラスチックフィルムの袋に封入。それを銀ナノインク回路で作製したヒーターで加熱する。袋の液体を気化・膨張させることで、モーターの駆動力を得る仕組みを開発した。モーターは自然冷却によって液化することから、繰り返し動作させることが可能だ。
研究グループは、開発したモーターを使ってロボットの関節を模した駆動実験を実施。大きさ80×25mm、重量約3gのモーターを試したところ、小指程度の力に相当する約0.1N・mの回転力を生み出し、最大動作角度は90度に達したという。モーターは、数万円以下の安価な装置があれば短時間で作製できるとしている。
虫や植物などの生体を模倣したソフトロボットや、紙のような形状から立体的に自動で組み上がる折り紙ロボットも試作。今後は、加熱方式の工夫によりモーターの動作速度や出力の向上を目指すとしている。