ナマコからヒントを得て水に反応して動くソフトアクチュエーターを開発

ナマコの特有の行動からヒントを得て、水に反応して作動するソフトアクチュエーターが開発された。このアクチュエーターはプログラム可能で、従来のものより強力で素早く作動する。この研究は韓国の浦項工科大学校(POSTECH)によるもので、2021年6月16日付で『Journal of Materials Chemistry A』に掲載され、掲載号のインサイドカバー(内表紙)に選定された。

ナマコの体はキャッチ結合組織(可変結合組織:MCT)でできているため、周囲の環境に応じて硬くなったり柔らかくなったりする。ナマコの弾性率は数秒のうちに最大で10倍まで変化し、狭い隙間を素早く通り抜けたり、捕食者を威嚇するために膨らんだりする。この変化は、化学調節物質を制御することにより、コラーゲン組織内の水素結合を形成または破壊することで引き起こされる。さらには、死んでしなびてしまった後でも、吸水量を調節することで元の形に戻すことができる。

一方、水をエネルギー源とし水に反応するソフトアクチュエーターは、動きに自由度が求められるソフトロボティクスに応用できる。しかし、既存のソフトアクチュエーターは壊れやすく速度が遅いなどの理由から、限られた用途でしか利用できなかった。

今回、研究チームは水と反応して自由に形を変えるナマコのMCTからヒントを得て、プログラム可能で、水により動作する自己動作型ソフトアクチュエーターを開発した。開発されたソフトアクチュエーターは、従来のソフトアクチュエーターの強度と速度を上回るものだ。

このアクチュエーターは、非常に柔軟に変化するバルクのポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)ハイドロゲルをベースにしており、温度80℃の水中でも、水をエネルギー源とする従来のソフトアクチュエーターと比較して、200倍に当たる2ニュートンの作動力と300倍も速い3分の1秒という作動速度を示した。また、複数回テストをした結果、このアクチュエーターは300%の引っ張りひずみを受けても元の形状に復元するほど堅牢性があることが実証された。

このハイドロゲルアクチュエーターは、非常に強力で素早く作動し、電気がない場所でも化学エネルギーを利用することで動作させることができる。また、水分に触れて作動し柔らかく変形可能であるため、さまざまな環境に容易に適応できる。

さらに、架橋剤の濃度と容積を調整するだけで、作動力だけでなく作動速度も広い範囲で精密に調整することが可能だ。そのため、開発されたソフトロボットグリッパーは、壊れやすい物体をつかんだり、大きな傷口を縫合したりといった無数の複雑な作業を、均一で適切な力で行うことができた。

このアクチュエーターは、産業用ロボットを始め、工業分野や生物医学分野といったさまざまな分野で応用できるという。

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