NECは2017年10月19日、独自の金属原子移動型スイッチ「NanoBridge」を搭載したFPGA（NanoBridge-FPGA、以下NB-FPGA）のサンプル製造を開始したと発表した。NB-FPGAは超低消費電力かつ高信頼性が特長で、人工衛星に搭載する端末や自動運転などでAI処理を行うエッジ端末など、あらゆる分野のIoT機器における基幹部品として期待できるという。
FPGAは、ユーザーが用途に合わせて組み替えができる再構成可能回路で、現在では揮発性メモリのSRAMに回路情報が保持されるSRAM型FPGAが主流となっている。SRAMなどのメモリは電荷の有無により「0」「1」で回路情報を保持するが、LSI（大規模集積回路）に放射線が入射するとメモリの電荷が乱され、動作エラーが発生する場合がある。
一方でNB-FPGAは、電荷の有無ではなく金属スイッチの金属架橋の有無により回路情報を保持するため、放射線の影響を受けにくく、エラー発生率1／100以下の放射線耐性を備える。また、原子レベルの極小スイッチにより、チップサイズは従来比の1／3となっている。LSIは駆動時に多くの配線の充放電に電力を消費するが、小さいチップは配線長が短く充放電の電力を大幅に低減できるため、電力効率も10倍は向上するという。
今回NECは、半導体専門生産企業の300mm専用ウェハ製造ラインにてサンプル製造を行う。サンプルの論理ソースは100K-ASICゲート相当、内部動作電圧は1.1V、入出力電圧は1.8V、最大内部クロックは256MHzで設計ツールはNECより提供される。最大製造規模は5000枚／月となる見込みで、2017年度中にサンプル出荷を開始する予定としている。
