熱による高速、高効率な磁極制御に成功――MRAMやAIハードウェアの低消費電力化に期待 阪大など

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二重絶縁体型磁気トンネル接合の概念図

大阪大学、産業技術総合研究所(産総研)、科学技術振興機構(JST)は2018年12月3日、ナノサイズの磁石の磁極の向きを熱によって高速/高効率に制御することに成功したと発表した。

情報通信機器の低消費電力化のため、磁石の磁極を利用した不揮発性メモリーである磁気ランダムアクセスメモリー(MRAM)の開発が精力的に進められている。MRAMでは、磁気トンネル接合(MTJ)と呼ばれる素子の磁極の向きを小さな電流/電圧で制御することで記憶を行う。これまでは、その情報の書き込みには、磁極の方向がそろった電子を流すスピン注入を行う方式が主流だった。しかし、この方式では書き込みを高速にすると電流が急激に増大するという問題があった。

一方、研究グループは、素子に電圧を印加して磁石の磁気異方性を変えることで情報の書き込みができることを報告。しかし、その実用化には、磁気異方性変化の大きさの増大が求められていた。

研究グループは今回、通常のMTJ構造ではなく、金属磁石(自由層)の両面を絶縁体で囲うMTJ構造を製作。金属磁石と絶縁体の間の熱の拡散を抑制することで、ジュール熱による巨大な磁気異方性変化を得ることに成功した。そして、その熱による磁気異方性変化の大きさが、高速性が確かめられている電圧による磁気異方性変化の最大値に匹敵することを確認した。

印加した直流電圧に対する自由層の磁極の磁気異方性

また、その大きな磁気異方性変化を利用することで、マイクロ波が増幅される新たな現象を発見。直流電流を印加したMTJにマイクロ波を印加したところ、60%程度増幅された反射マイクロ波を確認した。

マイクロ波が増幅される現象の概念図(左図)とマイクロ波パワー反射率スペクトルの磁場依存性(右図)

研究グループは今回の成果について、電圧駆動MRAMの開発に新たな知見を提供すると説明。また、AIハードウェアの低消費電力化やマイクロ波発振素子の高効率化への波及効果も見込めるという。今後は、磁性体を用いた低消費電力人工知能の実現や、検波素子や発振素子などのマイクロ波素子の高性能化が期待されるとしている。

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